大勝だった。大阪府知事、市長のダブル選は22日、現職松井一郎氏(51)が知事再選、市長に新人で元衆院議員の吉村洋文氏(40)が初当選。ともに橋下徹大阪市長(46)率いる政治団体・大阪維新の会が勝利した。しかし、圧勝劇の裏で吉村氏は“弱点”も見せてしまった。

 吉村氏と松井氏は住民投票で否決された「大阪都構想」への再挑戦を掲げ、ともに自民党推薦の市長選候補・柳本顕元市議(41)、府知事選候補の栗原貴子元府議(53)らを破った。

 投票が締め切られた午後8時に当選確実が報じられると、大阪市内のホテルの会見場は歓声に包まれた。ホテルにいた橋下氏も“秒殺”に「まずは良かった」と2人を祝福。その後は維新の議員やボランティアに「8年間、ありがとう」と感謝したという。

 橋下氏は12月18日までの市長任期を全うして政治家を辞めると表明。一方で新党・おおさか維新の会の「法律政策顧問」就任が予定されている。会見に橋下氏は姿を見せることはなかった。

 会見で吉村氏は「明るい大阪、発展する大阪を実現したい」と力を込めて語った。その吉村氏にはいわくありげな経歴もある。昨年1月に亡くなった歌手でタレントのやしきたかじんさん(享年64)に関連した仕事。

 橋下氏を政界の風雲児に押し上げた“関西の視聴率王”たかじんさんの個人事務所の顧問弁護士だったのだ。

 作家・百田尚樹氏が故人の闘病生活を描いた著書「殉愛」にも、たかじんさんの長女と最後の妻・さくらさんとのトラブルのキーパーソンのY弁護士として登場する。

 吉村氏はかつて、たかじんさんの遺言執行者でもあった。故人に近い人物が明かす。

「当初は事務所から書類などを持ち出したり、さくらさんのために動いていたが、遺産の遺留分などでもめた。ヤバイと思ったのか途中から距離を置きだした。その結果、さくらさんから解任請求を受けて辞任した。しかも長女側からも解任請求を受けるという、あり得ない状態だった」

 大阪市には、たかじんさんの遺産から「うめきた」の緑地化のために寄付がなされる予定だが、現在はペンディングとなっている。

 背景を知っている吉村氏だが「大阪市の立場として対応していくことになる。凍結している理由があると思うので、恐らく何らかの法的な問題が解決した段階で、そのときに市として判断する」として距離を置いた。

 出馬後にさくらさんとのやりとりがあったかについて問われると、吉村氏は「弁護士業務に関することは一切、お答えすることができない」。

 弁護士時代に付き合いはなかったという橋下氏との出会いはたかじんさんがきっかけか?という質問には、「私とたかじんさんの話はいろいろありますけれども、公で言うような話ではない。あれじゃないですか、たかじんさんの評価については、大阪のみなさんに愛されている人だという認識はありますんでね。それ以上のことは僕はない。個人的にやりとりしたことを、この場で言うつもりはない」と会見を理路整然とこなしていた中で突然、しどろもどろになっていた。

 柳本氏の地元・西成区でこそ13票差で負けたものの、その他の全ての区で吉村氏は勝利を収めた。

 圧倒的な民意を得た一方で、いまも根強い多くのたかじんファンからは総スカンの危機に陥っている。