デジタル社会到来で、消費税も所得税も廃止になる!? 7月10日投開票の参院選では、物価高対策に消費税減税が議論されているが、消費税はおろか所得税や法人税がなくなる新たな税制が浮上している。参院選比例代表に自民党から立候補している尾立源幸(おだちもとゆき)氏(58)が提唱している支出税(決済税)がそれで、サラリーマンが受け取る給与も天引き額が大幅に減少されるというのだ。革命的な税制の仕組みとは?
「物価高対策や消費税増税に対して、抜本的な対策にもなり得る」と話すのは、財務政務官だった尾立氏。提唱しているのは、消費支出時に0・3%を課税する税制プラン「支出税」だ。
令和4年度の税収は国税が65兆2350億円、地方税が43兆8283億円が見込まれ、計109兆633億円になる。ちなみに、日銀の1営業日あたりの資金決済額は約180兆円にも上り、年間の稼働日を240日とした場合、0・3%の課税で、年間約130兆円の税収となる試算だ。
令和4年度の国税の内訳では消費税や所得税が約70%を占める中、尾立氏は「物の価格が上がるにつれ、消費税の負担も上がる。所得税、住民税もあって、なかなか手取りが増えない。決済時に課税する方法なら法人税も所得税も消費税も必要がなくなり、可処分所得が増える。高所得者および消費生活の高い方、資産取引の多い方はひょっとしたら税負担が増えるかもしれないが、面白いアイデア」と話した。
この税制には、数量政策学者で嘉悦大教授の高橋洋一氏(66)も太鼓判を押している。尾立氏の公式ユーチューブチャンネル「おだちチャンネル」での対談で、高橋氏は「所得税の欠陥は、所得税をかけた後に消費しない貯蓄にも金融課税がかかり、二重課税になっている。直接税で、支出時に課税する方法なら、二重課税にはならずに理論的に一番優れている」と絶賛した。
支出税は、20世紀を代表するイギリスの経済学者ニコラス・カルドアがかつて提唱し、1957年にはインドでも導入されたが、10年足らずで廃止された。複雑かつ現金取引のため、個人の支出を捕捉するのが困難だったからだ。
「カルドアが主張した支出税を今のデジタルの世の中に復活させる。当時は理論的に正しくても技術が追いついていなかった。技術はだいぶ進歩したので、デジタルならば、個人のところで支出総額がいくらかも分かる。直接税で累進課税もできる」(高橋氏)
いまや現金決済の代わりに電子決済が急速に進んでいる。キャッシュレスの環境は整いつつあり、いずれ紙幣や通貨はなくなり、デジタル通貨に取って代わる日も間近に迫っている。お金の流れがデータで完全に可視化される新時代に向け、既に支出税の導入に動き出している欧州の国もあるという。
尾立氏は、支出税が導入されれば財務省は煩雑な事務処理や税務調査などから解放され、仕事は大幅にスリム化するとのメリットも説く。
日本の税制は負担が重くなる一方で、先行きは暗いが、支出税の導入で仕組みが大きく変われば、明るい未来も見えてくる。今後の議論が注目される。