お立ち台に成長の跡があった――。ソフトバンク・上林誠知外野手(25)が14日の日本ハム戦(札幌ドーム)で3安打2打点の大活躍。5回に先制打、7回にはトドメの一発を放ち、公私で仲のいい石川の開幕戦以来となる2勝目をアシストした。

 開幕一軍を逃した上林は今月3日、デスパイネの降格に伴う入れ替えで初昇格。二軍スタート、今回の昇格の経緯も含めて悔しさは尋常ではなかったはずだ。5日の楽天戦でも3安打4打点。グラシアルが離脱する中、外野のレギュラーを実力でつかむべく奮闘している。

 敵地のヒーローインタビューでは、相手ファンもクスッと笑うエピソードを披露した。「え~昨日アニキから電話をいただきまして…。札幌ドームでホームランを打つ夢を見たと言われまして、それが現実になってよかったです。もっともっと夢見てほしいなと思います」。話を披露する前からうっすら笑みを浮かべていた25歳は、精神的な余裕を感じさせた。

 心・技・体の成長なくして一流にはなれない。かねて上林が指摘されてきたのがメンタル面。完璧主義な性格が自分を苦しめてきた。上林の仙台育英時代の恩師・佐々木順一朗氏(61=現・学法石川監督)は、教え子の変化に気づいている。

「成長の跡は野球のうまい、下手だけじゃない。ユーモアのある話を織り交ぜて人を楽しませる話ができるようになった。それは心に余裕があるからできること。『野球だけ』でも、つまらない。人間の幅。クルマに無頓着だった子が、いい意味でいいクルマに色気を見せ始めたりね。そろそろやってくれると私は思っています」

 意識的に変わろうとする変化ではなく、自然と変わり始めたところに恩師は期待を寄せている。

 機転の利いたトークは、成長のバロメーター。今度こそ、真の覚醒を見せてくれそうだ。