独自の切り口で勝負する東京スポーツは、当然独自の取材活動が求められている。
2007年、カンヌ映画祭を取材したときのことだ。60周年というメモリアルイヤーだったカンヌは、とにかく話題がてんこ盛りだった。特別企画に招待された北野武監督が羽織はかま&チョンマゲ姿でレッドカーペットを歩けば、河瀬直美監督の「殯の森」がコンペティション部門でグランプリを受賞。ほかにも、初監督作品「大日本人」が監督週間に招待された松本人志や、元SMAPの木村拓哉と香取慎吾までカンヌ入りし、各スポーツ紙記者はてんてこ舞いだ。
もちろん、私も取材に駆けずり回っていたが、ある日裏通りでポルノショップがあることに気づいた。エロにも力を入れる東スポとしては、これは入らざるをえない…というわけで、入ってみることに。店内はエロDVD、オモチャ、セクシー下着などが陳列され、日本のアダルトショップと何ら変わらない。
気さくな男性店員が「わざわざ日本から来たのか。日本のアニメは人気だよ。中でも売れているのがコレさ」と「HENTAI CLIMAX」なるタイトルのDVDを取り出してきた。中身はというと、日本の少女が白人に辱められるというもの。こんなものがカンヌではやっているのかと思うとゲンナリしたが、この店員は「今度、ポルノ女優のイベントがある」と言う。何でもファンとツーショット写真撮影したり、DVDにサインしたりするらしい。「まるで秋葉原のソフマップアミューズメント館じゃん」と驚いた私は、「ぜひ取材させてほしい!」と懇願した。店員は「お前は映画祭を取材しに来たんじゃないのか」と苦笑していたが、何とかOK。
果たして当日、たしかにグラマラスなポルノ女優アクセル・マグラー嬢がいた。フランスの“ヲタ”たちは7人ほどか。みんなマグラー嬢のファンサービスにうれしそう。日本のグラドルイベントと全く同じ光景だ。マグラー嬢に好きな男性のタイプを聞くと「ゴメンナサイ。私、レズビアンなの」と言われて面食らってしまったが、まさかカンヌでポルノ女優の取材をするとは思わなかった。動いてみるものである。
さて、それから数日後、今度はカンヌの立ちんぼ情報を耳にする。これも行かねばなるまい…と行ってみることにした。場所は繁華街から外れた住宅街なのだが、歩を進めるとだんだん街灯も少なくなり、あたりは真っ暗。治安は比較的いいとはいえ、さすがに怖い。と、その時、前方に怪しい車が1台止まっていることに気づいた。なぜ怪しいかというと、助手席のドアが開いているのだ。
「ドアが開いているのが立ちんぼのサインなんです。そこで女と交渉してホテルに行くか、車内で済ますことになりますね」(事情通)
おそるおそる、くだんの車に近づき、中をのぞくと、いた! ド派手なメークとピンク色のミニスカート姿の60代の熟女が! 動揺を抑えながら私が「どんなプレーがあるの?」と聞くと「フェラ8000円、セックス1万3000円」という。安いのか高いのか、よくわからない。これがカンヌの熟女の相場なのか? ためしにプライスダウンをお願いすると「この値段だから」の一点張り。名前や年齢、どのくらいやっているのかなどの質問を投げてみたものの、値段以外のことにはダンマリだった。もちろん、私は買うつもりはなく「また今度にする」と丁重にお断りした。
華やかなステージばかりにスポットが当たりがちなカンヌ映画祭。その一側面を知ることができたのは貴重な体験だった。それも独自に動いたからだろう。これからも、あちこち動こうと思う。
(文化部デスク・土橋裕樹)
