時折テレビでAV監督の村西とおる氏を見ることがある。もちろんかつての勢いこそないものの、ギラギラした目は健在だ。その表情を見るとつい全盛期のダイヤモンド映像を思い出す。

 松坂季実子などの人気者を抱えていたころのダイヤモンド映像(1988年設立)は、本当にすごかった。目黒区青葉台の本社は事務所というより、豪邸だった。ある国が大使館として使用していたというほどで、確か、地下を含めフロアが5つあったと記憶している。各フロアの客室には幅2メートルほどの巨大な水槽があり、高価そうな熱帯魚が泳いでいた。

 この豪邸には何度も訪れたが、なんといっても一番驚かされたのは、金の扱いである。よく「札束が舞う」なんて表現をするが、まさにそんな状態であった。取材に訪れて部屋に一人で待たされることが多かったが、最初に訪れた時は仰天した。なんと机の上などに万札が3枚、4枚放置されているのだ。

 もう「どうぞ持って行ってください」とばかりだ。

 しかも、これが1か所や2か所ではない。待機している場所ごとに万札があるのだ。

 事務所のスタッフにどういうことなのか聞いてみると「取引したり、ギャラの支払いをしたりした時の端数でしょう」と言っていた。当時、400万~500万円のギャラを支払っていたとも言われるが、この金額からすると3、4万円は確かに「はした金」である。おそらくついつい拝借してしまった人間もいるのではないか。なんというドンブリ勘定だろう――当時はちょっとあきれたものである。ただ、その一方、今ではこうも思う。実はあの金で村西氏は人を見ていたのではないか、と。

 ところが、何年かすると万札が放置される光景もなくなり、熱帯魚も姿を消していた。その後ダイヤモンド映像は倒産。村西氏とは疎遠になってしまった。もし会う機会があったら、放置された万札の真相を聞いてみたいと思う。

(編集顧問・原口典彰)