東京都の小池百合子知事が7月31日、豊洲市場の安全宣言を出した。豊洲市場は10月11日に開場し、築地市場は83年の歴史に幕を閉じる。移転を巡っては土壌汚染、盛り土がないなど、様々な問題が噴出したが〝2大害虫対策〟はいまだ手つかずだった…。

 東京都は先月、築地市場の解体工事計画を市場や地元関係者に説明した。資料によれば、アスベスト飛散対策と並び、重要項目に挙げているのがネズミ対策だ。解体工事に伴い、隣接する場外市場だけでなく周辺の銀座、新橋エリアにネズミが逃げ込みかねないとあって、いかに押さえ込むかの作戦概要が明らかにされた。

 粘着シート、ネズミ捕りカゴ、殺鼠剤を用い、閉場前から駆除に乗りだすというが、驚くことに都側は築地の場内市場に何匹のネズミがひそんでいるかの実数を把握していないという。一説では数千匹どころか万を超えるともいわれる。

 ネズミの賢さは言わずもがなで、市場関係者は「対策や工事が入れば、ネズミも異変を感じて先に逃げ出すでしょう」と話す。都がネズミ対策に本腰を入れているような雰囲気もなかったため、関係者の不安は膨れ上がっているという。

 一方、豊洲市場で懸念されているのはゴキブリの大量発生だ。築地市場で茶屋を営む店主はこう話す。「築地市場は古いけれども、ゴキブリなんかは全然発生していなくて衛生的なんです。それは海水を使っているから。ところが豊洲市場はそうはいかない」と話す。

 新築で、屋根付きの豊洲市場は築地市場と比較にならないほど衛生管理が行き渡っているように映るが、主に魚の荷さばき場となる水産仲卸売場棟の4階には“欠陥”があるという。

「水道がほんの少ししかなく、海水も排水もないから掃除ができない。魚の血水が運ぶ際にたくさんこぼれるが、その掃除ができなければ、ゴキブリがわいてしまうんです」(同店主)

 仕入れた魚をさばこうとしたら、中からゴキブリ…なんて事態もあり得るという。「豊洲市場はゴキブリの巣ができる空間がたくさんある。もっと水周りを増やし、築地市場のように海水も必要。そうしないと衛生の問題を克服できない」(同)

 ちなみに同店主にネズミとゴキブリのどちらが切実な問題かを聞いてみた。「築地市場でネズミが衛生上、問題になったと保健所からクレームがついたことは70年間ありません。虫が入ったりするとすごい問題になる。すし屋でゴキブリがいたらアウトですよ。豊洲市場のゴキブリ対策を都に言っても無視されている。開場して問題が出てから考えるんでしょうが、大変なことになりますよ」

 ネズミとゴキブリはどちらも遠慮願いたいもの。市場関係者だけでなく、周辺住民や一般消費者にとっても切実な問題になりそうだが、小池氏も都も今は移転で頭が一杯。害虫問題は後回しになりそうだ。      

(文化部デスク・小林宏隆)