サッカー日本代表MF南野拓実(24)がついにリバプールのユニホームを着て公式戦デビューを飾った。自分がサッカー担当をしている間、昨季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝クラブに日本人選手が移籍して試合に出るなんて考えたこともなかったが、南野は自分の実力でその座を勝ち取った。スペイン2強といわれるバルセロナやレアル・マドリード、イタリア王者のユベントス、ドイツの1強バイエルン・ミュンヘンなど他国にも強豪クラブはあるとはいえ、現在世界最高峰リーグのイングランド・プレミアリーグのピッチに立つことは、何よりのステータス。あとは南野がどんな活躍をしてくれるのか。仕事を抜きにして、考えただけでもワクワクする。

 レスターで「奇跡の優勝」に貢献したFW岡崎慎司(33)、サウサンプトンで長らく活躍するDF吉田麻也(31)など最近ではプレミアリーグで活躍する日本人選手も珍しくなくなってきたが、20年前はプレミアリーグは高い壁だった。そこに風穴を開けたのがMF稲本潤一(40=相模原)だった。

 日韓W杯前年の2001年にアーセナルに移籍したが出番はほとんどなし。だがW杯で日本の初の16強入りに貢献するとアーセナルから期限付きで移籍したフラムで大活躍。UEFA杯(現欧州リーグ)出場権を懸けたインタートト杯決勝でハットトリックを達成し、その後のリーグ戦でも活躍し、サポーターやメディアからは「ラッキーチャーム」(幸運のお守り)とまで称された。

 勢いと運の大切さを感じさせる活躍ぶりだったが、10年にJ1川崎に移籍して日本に復帰した際にこんな話をしていた。

「僕はあの時、W杯からの勢いもあったからイケイケでプレーできたけど、そういうのって長くは続かない。でも向こうのトップ選手は、勢いのある僕の状態を1年間フルにやっている。その差は感じましたね」

 一方で、南野が意外な“悩み”を抱えていたことも思い出す。C大阪時代の13年にJリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞したJリーグアウォーズ後、私との1対1のやりとりでこんなことを話してくれていた。

「いずれは海外のビッグクラブでやりたいです。自信はあります。でも、そのためには実力だけでなく運も必要。ただ、僕は(運を)持ってる人間か分からないので…」

 南野選手、あなたは十分に「持ってる」人間ですよ。欧州CLで(前所属の)ザルツブルクがリバプールと同組になり、アンフィールド(リバプールの本拠地)でゴールまで決めて、移籍につなげたのだから。しかもリバプールのクロップ監督はドイツ・ドルトムント時代に香川真司も指導した日本通。ここまで揃っているのだから、運がないわけがない。3年前、岡崎が「奇跡の優勝」を果たしたのも衝撃だったが、南野がそれ以上の衝撃を我々に与えてくれると信じている。

(運動部デスク・瀬谷 宏)