先日、30歳になったばかりの某マスコミ関係者が「何ですか、それ?」と、その雑誌の名前すら知らなかったのには正直、驚いた。それもそのはずだ。伝説の月刊誌「噂の真相」が休刊して、今年で丸10年になるからだ。
編集長兼社長だったのは岡留安則氏(66)。現在は沖縄在住ながら、東スポには「マンデー激論」を月1回のペースで執筆してもらっている。その岡留氏にまつわる出来事で、最も衝撃的だったのは2000年6月7日のことだった。
「岡留さんが刺されたぞ!」
共通の知人からの電話を受け、現場となった東京・新宿の「噂の真相」編集部へ駆けつけた。日頃から、岡留編集長の机の上や棚は書類の山で、変わらず雑然としていたが、明らかにいつもと違っていた。当の岡留氏は搬送された後で、応接室も兼ねていた編集長室のソファから床、洗面所、トイレの便器まで大量の血痕が残っていた。
事件が起きたのは午後6時すぎ。右翼団体構成員の2人が、同誌の皇太子妃をめぐる「1行情報」に対し、抗議・話し合いをしている最中だった。岡留氏は灰皿で殴られ、併設されたキッチンにあった果物ナイフで右太ももを刺された。
病院での治療、警視庁四谷署での事情聴取を終えたばかりの岡留氏と合流すると、いつものように新宿ゴールデン街の小さなバーで平然と飲んでいたのを思い出す。
「噂の真相」は1979年に岡留氏が創刊した反権力スキャンダル雑誌だ。政界、財界、中央官庁、大マスコミ、文壇、芸能界、暴力団と容赦なく叩き斬る姿勢を貫いた。休刊時は、月刊誌としては「文芸春秋」に次ぐ2位をキープし、発行部数20万部を誇っていた。
元首相の買春事件、東京高検検事長の女性スキャンダルなどは一般紙が「『噂の真相』によると」と引用したこともあった。記事の情報があまりにもディープだったため、各業界の内部関係者が情報源と言われ、衝撃記事のたびに「ネタ元は誰だ?」と騒動になった。
本紙も同誌のスクープをきっかけに取材したり、合同取材したりした。ジャニーズ事務所のホモ・セクハラ裁判、所属タレント交際相手の堕胎騒動、TBS社員の乱交パーティーなど多くのネタで〝共闘〟した。
岡留氏本人が主役になることも。岡留氏と、作家・岩井志麻子氏との「ディープキス&乳首いじり」写真が本紙の1面を飾ったこともあった。
岡留氏は「よく写真見つけたな~。撮ったのは○○だろ?」。まるで人ごとのようにおもしろがり、その記事は今でも岡留氏行きつけのバーの壁に張られている。
「噂の真相」の復刊や、編集長の後継者候補については何度も噂になったが、いまだ復刊はしていない。当時いた少数精鋭の編集部員は、今では名のあるノンフィクション作家になった人、変わらずライター業をする人、まったく別業種に転職した人など様々だ。来るゴールデンウイークには沖縄で岡留氏を囲んだ大OB会が催されるという。
「左翼のカストリ誌」と同誌をさげすむ声もあったが、タブーなき編集方針、内部告発の重要性、広告に頼らない経営などが、過去に類を見ない成功例だったことは意外と知られていない。10年を機にぜひ復刊を期待したい。
(文化部デスク・延 一臣)
伝説の暴露雑誌「噂の真相」休刊10年目の真実
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