【オハイオ州アクロン3日(日本時間4日)発】男子ゴルフの松山英樹(24=LEXUS)がリオデジャネイロ五輪に出場しないことを表明した。世界選手権シリーズ「ブリヂストン招待」最終日(ファイアストーンCC=パー70)のラウンド後に明かしたもので、虫アレルギーなどを懸念して苦渋の決断を下したという。日本ではリオ五輪選手団の結団式、壮行会が前日に行われたばかりのタイミングで、有力なメダル候補の辞退は各方面にも大きな波紋を広げそうだ。

 悩み抜いた末の決断だった。松山はラウンド後、リオ五輪の出場について「やめます。出ません」と辞退を表明した。「ジカ熱もあるし、虫に刺されてアレルギーの反応がよくなっていない。そういう不安のあるところではプレーを避けたほうがいいのかなと。向こうに行って腫れて、プレーできなくなるのが一番困る」と理由を説明した。

 五輪開催国のブラジルでは、蚊が媒介するジカ熱が流行中。妊婦が発症すると、小頭症の子供が生まれる可能性もあるもので、かねて虫への不安がささやかれている。ゴルフ競技は自然の中で開催されるため、「どんなに虫対策を施しても完璧に封じるのは難しい」と指摘されていた。

 特に、松山はプロ1年目の2013年11月の「ダンロップフェニックス」で、虫に顔を刺されて、右頬のあたりが大きく腫れるアクシデントに見舞われた。今年6月の米メジャー第2戦「全米オープン」では、右腕を虫に刺されて腫れたことから黒いテーピングを巻き、腫れを抑えながらプレーしていた。

 リオ五輪に向けて自身のアレルギーについてスタッフらと協議を重ねた結果、リスク回避のため欠場を決めたという。ゴルフの五輪代表は11日発表の世界ランキングをもとに、各国とも上位の男女2人が代表に選ばれる。現在、世界16位で日本勢トップの松山は出場すれば、有力なメダル候補だった。「よい選択かはわからないけど、時間もないですし、早めに決断した方がいいと…。五輪に出るのが一番いいのかもしれないけど、まだまだ試合も続くし、やめたほうがいいかなとなった」

 112年ぶりに五輪競技となったが、ゴルフ界ではジカ熱などを理由に辞退者が続出。ビジェイ・シン(53=フィジー)、ローリー・マキロイ(27=英国)、アダム・スコット(35=オーストラリア)に加えて、世界1位のジェイソン・デイ(28=同)も不参加を表明していた。

 リオ五輪で男子代表監督を務める丸山茂樹(46=セガサミー)は先週、松山について「相当迷っていると思う。ジカ熱も怖いし、治安もよくない。世界の仲間たちが欠場を決めている。個人戦だし、環境などさまざまな事情がある。松山には『気を使うな』と言ってあります」と話していた。

 男子ゴルフ界では「五輪よりもツアー重視」と皮肉られるほど、ビッグネームの辞退が相次いでいるが、A・スコットが五輪欠場を表明した際には、母国オーストラリアで大バッシングを受け、国民的な議論に発展した。

 くしくも3日には都内で五輪選手団の結団式が行われたばかり。リオに向けて国内のムードが高まる中、ネット上では「松山辞退」に落胆する声が続々。「ブラジルの環境が悪すぎる」「虫アレルギーならしょうがない」と同情する意見が多くみられた。それほど衝撃的な決断だった。