残虐性や計画性を指摘されても無罪を主張――。昨年3月、千葉県松戸市立六実第二小3年のベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさん(9=当時)の全裸遺体が見つかった事件で、殺人と強制わいせつ致死、わいせつ目的略取・誘拐、死体遺棄の罪に問われた元保護者会会長の渋谷恭正被告(47)の裁判員裁判の初公判が4日、千葉地裁で開かれた。法廷で渋谷被告は無罪を主張したが、検察側や証人からはおぞましい犯行の詳細が次々と明かされた。

 起訴状によれば、渋谷被告は昨年3月24日にリンさんの自宅周辺で、わいせつ目的でリンさんを軽乗用車に乗せて連れ去り、ネクタイで首を圧迫し窒息死させ、同県我孫子市の排水路脇に全裸の遺体を遺棄したとされる。

 渋谷被告は、伸びた髪に黒いジャージー、迷彩柄のズボンを着用し、ゆっくりとした足取りで入廷。捜査段階では一貫して黙秘を続けてきたが、法廷では「全て違います。検察官の主張は架空で捏造であり、私は一切関与していません」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。

 検察側は冒頭陳述で「被告の軽乗用車内のマットなどに付着した血液と、キャンピングカー内にあったネクタイなどから女児(リンさん)と同じDNA型が検出された」とした。リンさんの遺体に付着した被告の唾液などから検出されたDNA型が、2人の混合したものとみられることも指摘した。

 渋谷被告は、所有していたシルバーの軽自動車内でわいせつな行為を行い、殺害したとされる。検察側は「一定の計画性を持ってわいせつ行為に及び、殺害も不可避だと考えていた。動機は身勝手で、反省の態度も皆無」とバッサリ。

 証拠調べでは、キャンピングカーから金属製の足手錠、バイブレーター4本などSMプレー用の器具が押収されていたことも判明。他にもヒョウ柄の革手錠などもあり、それまで微動だにせず弁護人の隣で検察側の話を聞いていた渋谷被告は、鼻をかいた。リンさんの司法解剖を行った教授は「左右の上肢、下肢には帯状の表皮剥脱があった。膣や肛門には棒のようなものを挿入した時などにできる出血があった」と証言。残忍極まりない犯行の詳細が明かされた。

 リンさんの父のレェ・アイン・ハオさん(35)は愛娘の写真を持参し公判に臨んだ。傍聴後に行った記者会見では渋谷被告を見た感想を「太って元気な声で話して、逮捕されても楽で楽しい生活をしていたのでは。ちゃんと処罰するために死刑にしてほしい」と震える声で切実に語った。

 渋谷被告の無罪主張は通用するのか。

 元警視庁刑事で犯罪ジャーナリストの北芝健氏は「無罪を主張していますが、少なくとも懲役10年、15年くらいにはなるでしょう」としたうえで、こう分析する。「残虐な殺し方で、しかもSM器具まで出てきたということですから、裁判所が無罪を認めるわけがありません。無罪を主張するということは、犯行に対して反省をしていないということにもなるので、裁判員や裁判官からの印象は悪くなります。一貫して無罪を主張していても、状況証拠だけで死刑判決が出た和歌山の毒物カレー事件もあります」

 渋谷被告は自らも小学生の子供を持ち、子供たちを日頃から見守っていた保護者会会長だったことから、全国の小学生と親らへも衝撃を与えた。
 北芝氏は「保護者会会長の立場を悪用した幼児性愛者である可能性が高い。そうした性癖の詳細が今後、裁判で明かされるのかが注目されます」ともみている。

 公判は今月18日までの計10回で結審する予定だ。