イランで女子レスリングの指導を行った五輪4連覇の伊調馨(33=ALSOK)が17日未明、羽田空港に帰国した。髪や肌を露出できないイスラム教の戒律により、女子レスリングが行われていかった“未開の地”で約10日間、発展・普及に協力。最終日は出発3時間前までマットに立つ熱血指導ぶりだった。

 伊調は「満腹です。思ったより大変でした。反省と課題の繰り返しでしたが、なんとかやりきりました」と充実した表情を見せた。

 未来の女子レスリング指導者に技術を教える重要な任務とはいえ、相手は競技経験ゼロの女性ばかり。運動経験が乏しい人もおり、言葉の壁も相まってもどかしい思いもした。現地の暑さや、慣れないイスラム女性用の練習着など、日本では経験しないことばかり。練習場とホテルの行き来で休む暇はほどんどなかったが、憧れのレスリング王国で未来の指導者を夢見る女性のために、最後まで力を尽くした。

 イランは「レスリングは男性のもの」という考え方の国。それでもその誠実な指導が認められ、同国レスリング協会のハデム会長から「今後もまたイランに来てほしい。それに彼女たちを日本に送るので、また馨が指導してもらいたい」とお墨付きをもらった。

 伊調は「ここまで長い期間、コーチをしたことがなかった。今回やりきったことで、教え方が分かってきた。ただ、レスリングの楽しさや面白さは伝えきれなかったかもしれないのは残念。そこを一番伝えられる指導者になりたい」。他国からも指導の依頼が届いており、今後も指導者の“武者修行”が続きそうだ。