【レスリング世界選手権】金メダル快挙の猫レスラー・文田「東京のマットでまた君が代を流したい」

2017年08月24日 11時00分

金メダルを手に笑顔の文田(ロイター)

【フランス・パリ22日(日本時間23日)発】“ニャンコローマンレスラー”が初出場の快挙を成し遂げた。レスリングの世界選手権2日目、グレコローマン59キロ級決勝で文田健一郎(21=日体大)がミランベク・アイナグロフ(23=カザフスタン)を2―1で下し、金メダルを獲得した。日本男子の金メダルは1983年大会57キロ級の江藤正基以来34年ぶり史上4人目。21歳8か月の文田は五輪、世界選手権を通じ、日本のグレコ最年少王者となった。

 優勝が決まると拳を握り締め、雄たけびを上げた。長らく日本男子にもたらされることがなかった世界選手権金メダル。「実力を発揮して優勝したい」。21歳の若き才能が堂々の有言実行で栄光をつかみ取った。表彰式で金メダルを下げ、チャンピオンベルトを巻いた。「メダルは重たいです。ベルトはめちゃめちゃうれしい。プロレスラーになった気分。君が代を聞いて気持ちが良かった」。感無量だ。

 決勝のアイナグロフは今年のアジア選手権決勝で文田が勝った相手。1―1で迎えた第2ピリオド、文田の武器である反り投げを警戒し、必死に守りを固める相手に苦労したが、文田は最後まで攻めの姿勢を崩さなかった。「反り投げを警戒してくるのは分かっていた。反り投げはできなかったが少しでも前に出て、プレッシャーをかけて前に出られたのが勝因だと思う」と振り返った。

 猫が大好きで、猫カフェめぐりが趣味。背骨が猫のように柔らかく“ニャンコローマンレスラー”を自称する。普段はいつ誰にでもニコニコ笑顔を絶やさない好青年。しかし心の中では自分の信念を曲げない強さを秘めている。「何を言われても自分が大事にしている考え方は変えません。例えば『自分に負けるな』という教えがありますが、僕は違うと思う。自分は敵じゃない。最後に頼るのは自分。『自分と戦え』ではなく『自分を信じる』」。この日も頑固一徹に自分を信じ、相手に立ち向かった。

 59キロ級はリオデジャネイロ五輪でも太田忍(23=ALSOK)が銀メダルを獲得、日本の層の厚さを世界に示した。その太田が練習相手として日体大の後輩・文田を支えた。「太田選手には勝ち方、戦い方、調整の仕方までアドバイスをもらった。『今回はお前の番。世界王者のお前と天皇杯(全日本選手権)やるぞ』と言ってくれた」。ハイレベルな練習が、表彰台の頂点につながった。

 若きエースの最大の目標は2020年東京五輪の金メダルだ。「五輪で金を取ったら、どれぐらいうれしいんだろうと感じた。あと2個(世界選手権で)金メダルを取って、東京五輪に行きたい。それが金メダルに一番近い。東京のマットでまた君が代を流したい」。文田の快進撃は始まったばかりだ。