東京スポーツ新聞社制定「2016年度プロレス大賞」授賞式が19日、グランドプリンスホテル高輪(東京都港区)で開催。昨夏のリオデジャネイロ五輪レスリング女子58キロ級で女性初の五輪4連覇を果たし、国民栄誉賞を受賞した伊調馨(32=ALSOK)にはレスリング特別表彰、財団法人・東京スポーツ新聞格技振興財団特別賞が贈られた。偉業を成し遂げ、なお成長を続ける伊調に本紙が特別インタビュー。17年のテーマに「脱・引きこもり&人見知り」を挙げた女王の真意とは――。

 ――レスリング特別表彰と財団法人・東京スポーツ新聞格技振興財団特別賞受賞、おめでとうございます

 伊調:いつもありがとうございます。東スポさんからいただいたこれまでのトロフィー、実家にたくさん飾ってあります。千春(姉で五輪銀メダリスト)の分も含めるとものすごい数です。

 ――昨年は国民栄誉賞も受賞した。これまでとの違いは

 伊調:これまでの五輪とまったく違います。国民栄誉賞をいただいたことで、生活が一変した。それだけすごい賞なんだなと思っています。この先、この賞に恥じることは絶対にしてはいけないな、と思います。

 ――2020年東京五輪を目指すかなど今後の競技生活について、まだ決めていない。17年はどういう位置付けか

 伊調:この1年は自分の世界を広げる年にしようと思っています。今年は自分の「引きこもり」、「人見知り」を直そうと思います(笑い)。なんでも勉強の年。寝転がっていないで家から出ますよ!

 ――おっ!いつになくアグレッシブ! 世界を広げるとは

 伊調:これまでレスリングで突っ走ってきて、自分がどれだけ社会を知らずに来たか分かった(笑い)。今年はレスリング半分、それ以外のこと半分のペースでいこうと思っています。人生勉強、社会勉強ですよね。

 ――例えばどんなことに興味があるのか

 伊調:いろんなこと。最近は、お掃除のプロに興味がある。窓のサッシとか換気扇掃除とか、どんなスポンジ、洗剤がいいのかとか。プロっぽく極めたい。料理もそう。いかに手際よくできるか極めたい。

 ――意外なところに…

 伊調:それに、社会の仕組みとかよく分かっていなかったので、勉強したい。インフレとかデフレとか経済についても分からないし、お金についても無知ですし。

 ――それは大事です

 伊調:興味のある着物についても、もっと知りたい。自分で着られるようになって、日常生活で着て歩けるようになりたい。今、挙げた勉強は、この先どんな人生を歩んでも損はないですよね。結婚して、お母さんになっても役に立つ。子供は最低3人、最高5人欲しいんですが、いろいろ人生設計を考えたら勉強したいことがたくさんあります。今年は興味のあるというか、いろんなことに手を出すと思う。

 ――もう半分のレスリングは

 伊調:レスリングのコーチングプログラムをいくつか受けたい。国内の(スポーツ界)ネットワークを広げたいし。最近は地方から子供たちの指導などで呼んでもらえる機会が多いんです。この間も佐賀に行ったし、この後も福岡、滋賀など全国に行きます。勉強になりますよね。

 ――みなさん、憧れの伊調選手に教えてもらいたい

 伊調:でも、今は金メダリストだから呼んでもらっている感じ。いずれは本当に実力で呼んでもらえるように理論、技術を身に付けたいです。海外にも行き、学びたい。それにはまず(練習できずに痩せた)このヨボヨボの体をどうにかしないと(笑い)。あと、指導で行っても自分がやりたくなっちゃうので、練習着を持たずに勉強だけで行く機会もつくらないと。

 ――大忙しの1年になりそうだ

 伊調:今後どんな道に進むかにもつながってくると思う。いろいろやってみて自分がどう感じるか。「(競技を)やろう」というスイッチが入るかもしれないし、そこは自分でも分からない。いずれにせよ、17年はこの先につながる重要な一年になりますね。

☆いちょう・かおり=1984年6月13日生まれ。青森・八戸市出身。3歳から八戸クラブでレスリングを始める。2001年のジャパンクイーンズカップ(10年から全日本選抜選手権へ移行)で優勝し注目を集める。02年世界選手権で初優勝後、これまで通算10回の優勝を誇る。04年アテネ、08年北京、12年ロンドン大会の63キロ級、昨年リオ大会の58キロ級を制し、五輪4連覇達成。中京女子大(現至学館大)卒業。166センチ。