日本レスリング伝統の吉兆だ。日体大レスリング部のリオ五輪壮行会が10日、都内で行われた。本来なら日本選手団の赤いブレザーに白いズボンの公式ユニホームを着用し壇上に上がるはずが、グレコローマン59キロ級代表の太田忍(22=ALSOK)だけはなぜか紺のスーツ。なんと会場に来る際、公式ユニホームを電車の網棚の上に置き忘れ、先輩のスーツを借りたというのだ。

 とはいえ、レスリング界では、忘れ物は王者の“伝統”。1964年東京五輪フリースタイルフライ級(52キロ級)金メダルの吉田義勝氏(74)が、電車の網棚に金メダルを置き忘れたのが第1号。さらに88年ソウル五輪フリー48キロ級金メダルの小林孝至氏(53)も、上野駅の電話ボックスに金メダルを置き忘れた。2人とも後に手元に戻ってきている。

 日本レスリング協会の福田富昭会長(74)は「レスリングには金メダルを置き忘れたのが2人おります。伝統です。これで金メダルになります」と前向きに激励。活躍の吉兆としてとらえた。

 すでにユニホームは見つかり、事なきを得た。壇上で馳浩文部科学相(55)に「ツリパン(試合着)は忘れないように」と注意され、激励に訪れた参議院議員のアントニオ猪木氏(73)には闘魂ビンタを見舞われた。

 太田は「金メダルを取って、公式ユニホームを着て戻ってきます」と力強く宣言したが、果たして…。