
リオデジャネイロ五輪開幕まで、いよいよあと50日。金メダル量産が期待されるレスリング女子で若手のエースとして注目を集めるのが、2013年から世界選手権女子48キロ級で3連覇中の登坂絵莉(22=東新住建)だ。減量と闘い、最軽量級で体を張って初の五輪に挑む美女レスラーに本紙が直撃インタビュー。いつも絶やさぬ笑顔とは対照的に、自らを「執念深い」と表現する闘争心の塊が大舞台の頂点を目指している。
――リオ五輪まで残り2か月を切った。減量を考え、大好きな甘いものを制限しているとか
登坂:本当にチョコが大好きで、「命」なんです。チョコだけで1000キロカロリーぐらい平気で食べてしまう。でも、今は勝つために我慢しています。たまには食べますが、毎日楽しみだったコンビニには自分からは行かなくなりました。買うとしてもサラダチキンとかだけ。
――やると決めたら徹底する
登坂:はい。何事も全部全力でやります。絶対、手は抜かない。勉強もレスリングも補強、アップも。ランニングは遅いですが、遅いなりに頑張る。後で負けたときに後悔するから。人となんでも競うタイプだから。負けたくない。
――いつもニコニコしているが、相当に芯が強い性格なのか
登坂:私、執念深いんです。本当にしつっこくて怖いですよ~(笑い)。嫌なことを言われたり、されたりしたら、ずーっと忘れないですもん。何年かかっても「絶対に見返してやる!」みたいに感じて心に秘めてる。そういうタイプ。
――こ、怖いよ…。例えばどんなふうに
登坂:以前、ある試合で負けてしまった時に「そこまで言わなくてもいいのに」と感じる報道を目にして、とても悔しくて。泣いて父(修さん)に電話したら「いつか『こう言われて悔しかったです』と言えるぐらいになれ」と。「見返してやる~」とずっと思ってました。あと、ライバルやその関係者が「登坂には絶対に勝てる」と言っているのを聞くと「絶対、絵莉がいったる(勝ってやる)からな」と思います。
――見事に見返してきて、今がある
登坂:全部バネにしてきました。でも、負けは素直に受け入れますよ。
――2月のアジア選手権で中国選手に、2012年9月以来の敗戦を喫した
登坂:負けましたが、実力差があるとは思っていない。ただ一つの処理が甘くて返されただけ。だからその選手に対する恐怖心はない。喜び方とか半端なかったから、むかっときましたけど(笑い)。顔は笑顔でしたが、表彰式の時も悔しすぎて手とか震えてたんですよ。「五輪では絶対私が勝つから」という気持ちになりました。
――五輪前に負けたことはどう思うか
登坂:負けじゃないと、なかなかあの悔しさは味わえない。負けて良かったと思えるようにするしかないですね。(吉田)沙保里さんにもそう言われました。
――尊敬する吉田とともに五輪に行けるうれしさは
登坂:沙保里さん、本当に大好きです(突然、横のリュックを抱きしめる)。悪いところがない。尊敬してやまないです。すごく優しくてとても気遣ってくれるんです。
――どんな時に
登坂:この間、練習中に少し不安になって泣いてたんですよ。沙保里さんは絶対見てないと思ったのに夜、「絵莉、今日泣いてなかった? 大丈夫?」ってLINEが来て。相談したら、また優しく答えてくれて。最高です。五輪へ一緒に行けるのが本当にうれしい。
――五輪はいつから行きたいと思ったのか
登坂:本当に行きたいと思ったのは、大学1年生の時。高校時代も五輪に出たいとは思いましたが、現実を知らされ、半分諦めていました。でも、頑張ってると思っている両親を裏切りたくなかった。少しでも成長した姿を見せようと練習していたら、運もあって全日本で2位(高3)。そこからは「あれ? もう少し頑張れば勝てるんじゃないか?」って頑張りました。
――その五輪が目の前だ。表彰台の一番上はやはり良いもの
登坂:はい。半端ないですよ。本当に五輪で1番を取りたいですね。
※登坂は大学を卒業し、4月から新生活をスタートさせた。東新住建に入社する傍ら、至学館大大学院健康科学研究科で運動生理学について研究を続けている。レスリングの競技レベルにおける反応時間の違いをテーマにしており、自らが被験者になることもある。寮を離れたが、食事は寮で後輩たちと食べる。体重調整も重要な階級とあって外食でも何を食べたら良いか栄養士に聞き、体調を維持している。
☆とうさか・えり=1993年8月30日生まれ。富山県出身。元国体王者の父・修さんの影響もあり、9歳から高岡ジュニア教室でレスリングを始める。愛知・至学館高から至学館大卒。現在は同大学院に在学中。2012年の全日本選抜選手権女子48キロ級で優勝し、同年の世界選手権に初出場して銀メダルを獲得。13年から同大会を3連覇中。152センチ。