“霊長類最強の女″ことレスリング女子の吉田沙保里(33=ALSOK)が24日に都内で緊急会見を開き、今年限りで所属するALSOKを退社すると発表した。日本人初の4連覇を狙う五輪を来年8月に控える時期に“女王”が、あえてフリーになる決断を下したのは一体なぜなのか。その裏事情とは――。

 この日午後、報道各社に吉田が急きょ会見を行うと連絡が入った。緊急に加え、クリスマスイブというタイミングから「結婚」や「引退」の臆測が広まって報道陣が殺到。テレビ各局は中継車を出し、夕方のニュース番組で会見の様子を生放送する局まであった。

 だが、会見では「来年からはフリーでやっていきます」とALSOKの退社を発表しただけ。あまりの肩透かしに、質疑応答でフジテレビの内野泰輔アナウンサー(23)が「このたびの引退は…」と口走り、吉田が「引退ではないです」と返す一幕も。結婚も「ない」と断言。当面はフリーで活動し、練習拠点はこれまでと同じ至学館大を使用する方針という。

 五輪を目前に控える時期に、なぜ吉田は所属を離れる決断をしたのか。その理由について「いろんなことにチャレンジしたい。今までテレビやドラマ、CDデビューなどをさせていただいて楽しい思いがあり、それがパワーになってレスリングにも打ち込めた。そういった活動で視野が広がり、多くの出会いもあった」と芸能界へ本格進出する考えを明かした。

 退社で気になるのが、コミカルな演技でお茶の間にも浸透しているALSOKのテレビCMだ。同社レスリング部の大橋正教監督(51)は「今出てくれているけど、フリーになるわけだからギャラを払って出てもらうことも検討している」と説明。これまでは社員のため出演料は発生していなかったが、今後は“タレント″として改めてオファーを出す方針。現在のCMは当面そのまま放映する予定だ。

「正直、CMオファーがたくさんある」と大橋監督が話すように、国民栄誉賞も受賞した人気者はあらゆる業界から引っ張りだこ。ALSOKの企業イメージ、さらには同社が日本オリンピック委員会(JOC)のスポンサーという事情もあり、これまではCM出演の範囲も限定的だったが、フリーの身となれば“足かせ″はなくなる。

 大手広告代理店関係者は「あれだけの選手だから(テレビCM出演)1社3000万~4000万円くらいが相場になる。ただ五輪を考えれば、それ以上もある」と指摘。少なくとも4~5社との契約が確実で数億円単位の収入が見込まれる。

 吉田は「(五輪)4連覇は日本人で誰も成し遂げていないので頑張りたい」と話したが、これまで以上の積極的な対外活動が、歴史的快挙に影響しなければいいのだが…。