【ネバダ州ラスベガス8日(日本時間9日)発】レスリング世界選手権(オーリンズ・アリーナ)は3日目(9日=日本時間10日)から女子の試合が始まる。48キロ級の登坂絵莉(22=至学館大)はストイックな減量生活を克服。最強のライバルで、ロンドン五輪銀メダルのマリヤ・スタドニク(27=アゼルバイジャン)との初対決を制しての3連覇を誓った。

 苦手の減量に、光が差してきた。「ずっと水だったんで、日本のミルクティーが早く飲みたい。お母さんに頼んであるんで。計量後のミルクティーが楽しみです」。吉田沙保里(32=ALSOK)も大好きな飲み物を、ようやく口にできる瞬間が迫ってきた。

 この1か月間で6キロ落とした。実に体重の1割以上。脂肪がほとんどない体を絞り込むのは精神的にもこたえる。食事はサラダと鶏ササミ、そして練習前の納豆ご飯だけ。

 それでも登坂は「ただ落とすだけじゃなく、勝つために落としている」と力強く言い切った。

 視線の先には、最強の相手がいる。今季絶好調のスタドニクだ。ロンドン五輪後は第2子出産で離れていたが、リオ五輪を目指して復帰した。スタドニクの強さを目の当たりにした日本の若手選手たちは今や「スタドニクさん」と敬意を込めて呼ぶほどで、登坂が文字通り“最後の砦”となっている。

 昨年はスタドニクが決勝前に敗れたため、対戦が実現しなかった。必ず当たるとも限らないが、今年は登坂もその機運を感じている。「めちゃ意識しますね。でも、よくよく考えれば同じ体重で、同じ女の子なので、それは力もあると思いますけど、同じ人間だしな、って思います。今回は絶対勝ちたい」。3連覇達成と同時に、日本に広まりつつある“スタドニク幻想”にも、終止符を打つつもりだ。

 王者として、迎え撃つ気持ちはない。相手の胸を借り、全力でぶつかるのが登坂のスタイルだ。「挑戦者の気持ちで伸び伸びやれるので、チャンピオンとしてのプレッシャーとかは全然感じてないです」。新旧頂上決戦を制した時、リオ五輪の金メダルが見えてくる。