世界V13 吉田沙保里がカレリン超え

2012年09月30日 12時00分

【カナダ・ストラスコナカウンティ発】悲願のカレリン超えだ――。レスリングの世界女子選手権2日目は28日(日本時間29日)に行われ、55キロ級決勝で、五輪3連覇の吉田沙保里(29=ALSOK)がヘレン・マルーリス(21=米国)にフォール勝ちし優勝。世界選手権連覇、五輪と合わせると世界大会で連覇を達成し、霊長類最強の男と呼ばれたグレコローマン130キロ級(当時)のアレクサンダー・カレリン(45=ロシア)が持つ記録を超えた。

 

 ロンドン五輪からわずか2か月弱、吉田がまたも偉業を達成した。迎えた決勝、第1ピリオドは確実に1ポイントづつ取り、2―0で奪う。第2ピリオド、バックを取り1ポイントを取ると、腹ばいのマルーリスの背後から右腕を取り、力を込めて裏返し。わずか52秒、圧巻のフォール勝ちで再び世界の頂点に立った。同時に、あのカレリンを超え、世界一の連続世界王者になった。


 2002年のギリシャ大会からその数、実に13回。吉田は快挙達成に「(連続記録で)世界一になった実感がこみ上げてきています。日にちがたてばもっとうれしさが倍増するような気がします」と笑顔を見せた。


 精根を使い果たし、ロンドン五輪で3連覇を達成した。どんなトップアスリートも当分、重圧から解放されたい、というのが普通の心境だろう。しかし、ロンドン五輪表彰式直後に今大会出場について聞かれた吉田は「カレリン超え、どうしよう。この嫌な緊張感がまたあるのかあ~。…でも、みんなも見たいよね?」とすぐに前向きな姿勢を見せた。絶対に負けられない大会を前にした不安や重圧、緊張ともう一度戦う苦しみよりも、周囲の人間の期待に応える気持ちの良さが勝っていた。


 みんなを喜ばせることが大好きで、サービス精神が旺盛。帰国後も、祝勝会やテレビ出演、イベントなどで全国を飛び回り、大忙しの日々を送った。朝だけ地元で練習し、上京してイベントに参加しトンボ帰りという日もしょっちゅうだった。1日中追い込んだ練習だけをこなせたのは試合前の1週間だけ。それでも「大変だけど、いろいろ出るのは楽しいよ! 」と逆にエネルギーに変えていた。これまでの貯金と、ここぞの時に発揮されるパワーは人力を超えていた。終わってみれば4試合連続フォール勝ちの圧勝だった。


 吉田の13連覇を導いてきた師匠の栄和人監督(52)も、感慨深げだ。「自分の愛弟子に言うことではないかもしれないが、真のチャンピオンだと思った。生活も、人間性を含めて、すべてに金メダルをやりたい」。教え子を手放しで褒めた。


 悲願を達成した吉田は、さらに前に進む決意も明かした。「4年間、頑張ろう、1つづつやっていこうという気持ちになっている。来年も出たいと思う」と、2016年リオ五輪に向け、世界大会の連勝記録を積み上げていく決意を固めた。来年から東京にも拠点を置き、新たな刺激を入れてレスリングに打ち込む構え。カレリンを超えた、霊長類最強の女・サオリンは、さらに前を進む。

 

◇試合後の一問一答