競技への注目度増加を目的として、世界レスリング連合(UWW)が、試合着(シングレット)の変更について審議を始めた。従来の上下一体型から、一気に露出度を増してグレコローマンは上半身裸、女子はビキニのセパレート案まで浮上している。各国の猛反発が予想されるなか、日本が誇る無敵女王・吉田沙保里(32=ALSOK)も強烈に「NO!」を突きつけた。

 一昨年、レスリングは五輪実施競技から除外の危機に直面し、ルール改正や組織改革などを進めた。五輪競技正式種目の座を保持した現在も、よりメジャーなスポーツを目指してあらゆる策を考案中。中でも大きく変わりそうなのがシングレットだ。現状ではフリー、グレコ、女子ともに上下一体型で体に密着するスタイル。関係者によると、1月の理事会では、野球やサッカーなど他の競技のように、ファンが気軽に日常でも着られる案が浮上し、複数のシングレットが提示されたという。上半身のみの攻撃で行われるグレコについては上半身が裸という大胆な案もあったが、波紋を広げているのが女子だ。

「より女性らしく」という考えから、ビーチバレーのようなビキニのセパレート型が浮上。当然、おヘソ部分や腹筋は丸見えとなる。さらには下半身がスパッツ+短パンの重ね着スタイルもあったという。現状と同じ上下一体型でも、背中が大胆に開いている案もあった。

 しかし、常時激しく組み合い続けるレスリングでセパレート型を採用した場合、ブラの部分がポロリと脱げてしまう可能性も大きくなる。五輪3連覇中で、世界の女子レスラーを代表する8人「スーパー8」に選ばれた吉田は「絶対に嫌です。もし決まったら競技を辞めます。今ですら(脱げそうになる)危ない場面だってある。そりゃ見せてもいい人はいいでしょうけど…」と断固拒否の構えを見せている。

 さらには、肌の露出が禁止されているイスラム教国家における女子レスリングの普及という問題もある。今でも実施に二の足を踏む国があるにもかかわらず、さらに露出度がアップすれば、普及にも影響しかねない。吉田以外にも「賛成できない」という選手や関係者の意見が多数出ているのも事実だ。一般のファン拡大が期待できそうな斬新な案ではあるものの、セパレート型実現への課題は多い。女王・吉田のビキニ姿は夢と終わる可能性は高そうだが…。