東京五輪レスリング男子フリー65キロ級決勝(7日、幕張メッセ)で、乙黒拓斗(22=自衛隊)がハジ・アリエフ(アゼルバイジャン)に勝利して悲願の金メダルを獲得した。

 試合後、感無量の乙黒は全身で喜びを表現した。両手を突き上げ、日の丸を手にを走り回る。さらにマットにひざまずいて数秒間、顔をうずめた。試合後は「ホントにオリンピックチャンピオンになったんだなって。なんか実感がないっていうか、ホントに夢がかなって信じられない気持ちでした。まだフワフワしています」と率直な感想を口にした。

 マットにキスをしていたのか?と問われると「キスではないです」とニッコリ。「マットにも、レスリングの神様にも感謝しました。2日間で4試合、すごく楽しい試合ができたので『ありがとうございました』って礼をさせていただきました」と説明した。

 接戦の試合内容については「ホントに何も覚えていません。コーチの顔しか覚えていない。あとでじっくり自分の試合を見ます」と話した。

 2018年世界選手権は日本男子最年少(19歳10カ月)で初制覇。初出場の五輪で見事に栄冠を手にしたが、ここまでの道のりは平たんではなかった。今の心境を「心がズタズタなので」と表現した乙黒は「プレッシャーだったり(周囲の)期待、取りたい気持ち、不安…。本気で目指しているからこそ起こるメンタルの疲れがあった」と打ち明けた。

 最後はすがすがしい表情で「まずは空を見てゆっくりしたいです」と話し、感慨に浸っていた。