レスリングの全日本選手権最終日(23日、代々木第二体育館)、女子53キロ級決勝で、3度の五輪を含む世界大会15連覇中の吉田沙保里(32=ALSOK)が55キロ級世界女王の浜田千穂(22=日体大)にわずか53秒でフォール勝ちし、2年連続12度目の優勝を果たした。2016年リオ大会での五輪4連覇に向け、タックル以外の武器の強化に手応え十分。さらに、練習以外でも“子守スクワット”で筋力維持に努めるなど、無敵の女王の強さはさらに増している。

 世界女王同士の対戦と注目された53キロ級決勝は、わずか53秒で決着がついた。開始早々、相手を倒し2点を奪うと、足をきめた状態で浜田の上半身を返し、一気にフォール。力強いレスリングで貫禄の勝利を収めた。

「今回は本当に調子が良かった。チーム(至学館大)で一番、年がいっているのに一番ケガがなく元気。(こんなに元気で)大丈夫なのかなと思った」とおどけた。

 新たな必勝パターンもつかんだ。圧勝続きのなかで効果的にポイントを取った技が「がぶり返し」。頭を下げた状態の相手の上半身を、向き合う格好で頭側から抱きかかえ、ひっくり返すパワー殺法だ。

「なんだかがぶり返しにはまっている」と現在、集中的に練習中。タックルに次ぐ武器として強化している。「練習では決まるけど、試合でダメだと意味がない。今回で、試合で決められる形ができたかな」と大きな収穫を得た。

 ベテランの域に入ったことで、日本レスリング協会の福田富昭会長(73)からは「筋力を絶対に落とすな」と厳命された。吉田も「これからも鍛えてきたい」と意欲的だ。そんななか練習以外で格好のトレーニングになっているのが“子守スクワット”だ。

 栄和人強化委員長(54)と吉田の親友・怜那さん(35)夫妻の愛娘・心遥ちゃんは現在生後8か月。近所に住む吉田は、心遥ちゃんを寝かしつけるため、抱っこしながら上下にゆっくりとスクワットし、あやしているという。子供が大好きな女王にとっては最高の癒し。さらに8キロの赤ちゃんを10~15分スクワットすることで「筋トレになっている」と一石二鳥だ。

 前日の48キロ級で優勝した世界2連覇中の後輩・登坂絵莉(21=至学館大)には「一緒にリオ五輪で金メダルを取ろう」と無料通信アプリ「LINE」で送信。後輩を励ますと同時に自らの目標も改めて明確にし、試合に臨んだ。「絵莉は『沙保里さんみたいになりたい』といつも隣で言ってくれている。一緒に頑張りたい」。最強女王の快進撃は止まらない。