レスリングの全日本選手権最終日(23日、東京・代々木第二体育館)、女子58キロ級決勝では、五輪3連覇の伊調馨(30=ALSOK)が世界ジュニア女王の川井梨紗子(20=至学館大)を6―0で下し、2年連続11度目の優勝を果たした。

 先月28日に母・トシさんが死去(享年65)。今大会のため今月5日から練習を再開したが、最愛の母の死は容易に受け入れ難く「本当に試合ができるのかな」という思いも頭をよぎった。


 そんな時に思い出したのは母の言葉だ。「母は試合は『死んでも勝て』という人だった。『自分のせいで試合に出ないなんて嫌だ』と言うだろうなと考えた。試合に出て勝つことで喜ぶだろうと」。八戸から母の写真を持ち帰り、常にそばに置いている。毎日、母と話し、試合に向かう気持ちを作った。


 この日は、あまりに勝ちを意識しすぎ、常に内容にこだわる自分のレスリングができなかったという。「お母さんのせいで、今日は勝ちにこだわりすぎてしまったよ。でも、ありがとう」と最愛の母に語りかけていた。