レスリングの全日本選手権2日目(22日、東京・代々木第二体育館)、女子48キロ級決勝で、世界選手権2連覇中の登坂絵莉(21=至学館大)が宮原優(20=東洋大)を6―3で下し、3連覇を果たした。ケガと発熱が続き、一時は棄権を考えたほどだったが、強い意志で激勝。奮起の裏には、試合直前に送られた女王・吉田沙保里(32=ALSOK)からのアドバイスがあった。

 決勝の相手は51キロ級で世界選手権に出場した強豪の宮原。第1ピリオドから一進一退の攻防が続くなか、第2ピリオドに登坂の劇的な4点タックルが炸裂。世界女王の貫禄を見せた。「ケガも多くて棄権しようかとも思っていたので、良かった」と安堵した。

 9月の世界選手権(ウズベキスタン)、アジア大会(韓国・仁川)で金メダルを獲得し、世界一の実力を証明した。だがその後、左足、右足、右すね、腰と故障が重なり、練習できない時期が続いた。さらに発熱し、まさに満身創痍。そんな絶体絶命の登坂を救ったのが、同じ至学館大で練習し、誰よりも尊敬する吉田だった。

 大会前に「誰にも気を使わなくていいから、自分の好きにやっていい」と言葉をかけられた。登坂は至学館大で主将の重責を担う。責任感から、故障を理由に練習量を抑えることには気が引けていたが、吉田のひと言で気楽になれた。無理をすることなく、負傷した体とうまく付き合いながら練習し、無事に大会を迎えることができた。

 試合前日にも吉田から無料通信アプリ「LINE」でメッセージが届いた。「一緒にリオ五輪で金メダルを取ろう」。この激励で発奮した登坂は、アジア大会時に選手村で同室だった吉田と金メダルをかけて撮ったツーショット写真をすぐに送信。「また、リオでも同室で同じ金メダルの写真が撮りたいです」とメッセージを添えた。

 これに吉田も即座に「それはいい!」と反応。「すごくうれしかった。沙保里さんは本当にすごい人だし、大好きです」。尊敬する先輩とのVロードをイメージできた登坂は不安が消え、この日の勝利につながった。

 来年は五輪出場枠がかかる世界選手権(9月、米国・ネバダ州ラスベガス)での金メダル獲得が目標だ。

「これからがスタートだと思っているので、これからも勝ち続けてリオを目指したい。沙保里さんと五輪で一緒に金メダルを取りたい」。身近にいる最高の師匠とともに夢を実現する。