若虎育成計画の思わぬ誤算

2012年08月21日 12時00分

<悩める阪神タイガース「凋落虎の深層」1>

 

 阪神が深刻な不振に陥っている。メダルラッシュで沸いたロンドン五輪期間に虎は黒星ラッシュ。一時は優勝争いの常連となった猛虎軍団は、なぜちょう落したのか。このまま暗黒時代に転落してしまうのか。連載で悩める虎の深層をえぐる。

 

 後半戦再開を翌日に控えた7月24日、総帥・坂井信也オーナー(64)と和田豊監督(49)が会食した。この時点で借金10の5位。坂井オーナーは「目に留まった選手は思い切って使ってくれ」と若手抜てきを要請した。

 

 しかし、後半戦も若手の台頭は少なく、借金は膨らんでいく一方。自力でのクライマックスシリーズ進出の可能性も消え、このまま2年連続Bクラスとなれば02年以来、10年ぶりの屈辱。数年前から指摘されていた課題の世代交代が進んでおらず、今季だけではなく来季以降も事態を好転させる見通しも立たない。あの忌まわしい時代の記憶もよみがえってしまう事態だ。

 

 この危機的状況に陥った原因となっているのは皮肉にも暗黒時代の再来を回避するための一大プロジェクトだった。03年に18年ぶりにリーグ優勝、2年後の05年にも再びリーグV。その後も3年連続で優勝争いを展開する中、球団首脳は「2度と長期低迷時代には戻らない」を合言葉に“若虎育成計画”を推進した。

 

 当時の球団幹部は「補強に頼ると補強が当たれば強いけど、当たらなければ弱いという不安定な状態が続いてしまう。常にチームの中心で生え抜きが活躍するような編成ができれば毎年、安定したチーム作りができる」と常勝軍団を築き上げるために育成システムの確立が急務と判断。二軍施設を充実させるとともに、育成部を創設し、二軍スタッフも増員。個々の選手に対して中長期の育成計画を作成し、二軍コーチとともに遂行していくことで生え抜きスターを育て上げることを目指した。

 

 同時に一軍首脳陣は「与えられた戦力で勝つ」、二軍首脳陣は「選手の育成」という“責任分担”を明確にした。このため真弓前監督、和田監督と一軍トップが二軍戦に足を運ぶことは、ほとんどなくなった。