【ウズベキスタン・タシケント11日発】レスリングの世界選手権4日目、女子58キロ級は伊調馨(30=ALSOK)が圧勝の連続で五輪を含め12度目の世界女王に。首の故障にも一切弱音を吐かずに練習に取り組み、こちらも五輪4連覇が見えてきた。

 伊調は決勝でワレリア・コブロワ(21=ロシア)に付け入る隙を与えない非情な攻めを見せ、5分48秒、10―0のテクニカルフォールで完勝。全試合無失点でフォール、もしくはテクニカルフォールという圧勝劇だったが、自分に厳しすぎる女王は「今日の出来は45点。練習が必要だと思う」と冷静に話した。

 30歳になった6月、首にヘルニアを抱えていることが判明。何より休むことが大事という医師の勧めに従い、約2か月間は大好きな練習ができなかった。

 首は良くなるのか。いつ練習ができるようになるのか。不安は大きかったはず。それでも愚痴や泣き言を親しい人たちにも言わなかった。伊調の姉で五輪銀メダリストの千春さん(32)でさえも「首を痛めたことも『実はさあ…』とかなり後から聞きました。馨はいつも、つらいことがあってもその時は言わない。弱音を吐かないんです」と妹の忍耐力に舌を巻く。

 伊調は自分で低周波治療器を購入。さらにラジオ波を使った独自の治療も導入し、地道に治療を続けた。普段の姿勢にも気をつけ、体調管理のために毎朝自分でグリーンスムージーを作るなど食生活にも注意を払った。不安を抱えながらも、日々できることに集中し、練習再開にこぎつけた。

「レスリングはやればやるほど難しい競技」と話す伊調の競技探求に終わりはない。「今後はもう少し試合を積みたい。海外でも国内でもいろんな選手と試合がしたい。理想のレスリングに近づきたいので、試合をこなし、課題を見つけたい」

 究極のレスリングマニアの行く先には、五輪4連覇が自然と付いてくるはずだ。