【レスリング全日本選手権】グレコ60キロ級Vの文田健一郎に先輩・太田忍が愛のムチ

2020年12月21日 11時00分

男子グレコ60キロ級決勝で鈴木(上)をそり投げで攻める文田だったが…(代表撮影)

 先輩から“愛のムチ”だ。レスリングの全日本選手権(東京スポーツ新聞格技振興財団協賛)最終日(20日、東京・駒沢体育館)、男子グレコローマン60キロ級決勝で、東京五輪代表で世界王者の文田健一郎(25=ミキハウス)が鈴木絢大(22=日体大)を2―1で下し、2年ぶり3度目の優勝を果たした。ただ、五輪の金メダル候補としては物足りない内容。文田の最大のライバルだったリオデジャネイロ五輪銀メダリストで総合格闘家の太田忍(26)がカミナリを落とした。

 優勝した文田は「新しい攻め手を課題にやってきた。ポイントにつながらないところもあったが、糸口は見つけられた。課題が明確に分かったところはよかった」と収穫を口にした。確かに、勝つには勝った。しかし、誰よりも文田を知る男は、あえて厳しい言葉を突きつけた。

「正直、今のままでは金は取れない。そこまで五輪は甘くない。今は技を確認する段階だとしても、後輩相手にテクニカルポイントを取れていないんですよ。俺がいたころのグレコ60の試合じゃない。審判に左右される展開。負けてもおかしくない」(太田)

 総合格闘技転向を決めた太田は大みそかの「RIZIN.26」(さいたまスーパーアリーナ)を控える。この日は2019年のアジア連盟「レスラー・オブ・ザ・イヤー」の表彰式のために来場した。メインイベントは今大会唯一の東京五輪代表、文田。多くが大技での圧勝劇を予想し、太田もその一人だった。

 今月上旬、日体大に練習に行ったが、文田は不在。決勝の相手の鈴木に胸を貸したところ、練習試合とはいえテクニカルフォールで勝っていたからだ。しかし、結果は辛勝。投げやローリングなどのテクニカルポイントがなく、審判がパッシブ(消極的)と判断した時に与えられる得点だけの地味な勝利だった。

 文田は太田が銀メダルを獲得したリオ五輪に同行し、スパーリングパートナーを務めた。太田に憧れ「この人を超えたい」と目標にし、切磋琢磨したからこそ今がある。一方の太田も、死に物狂いで練習した自分に勝ち、東京五輪代表の座をつかんだ後輩の強さを認め、金メダル獲得を心から望んでいる。だからこそ、この日の勝ち方に愛のムチを振るわずにはいられなかった。

「松本(慎吾)監督(日体大、日本協会グレコ強化委員長)やコーチ陣からも厳しいことを言われると思う。真摯に受け止めてほしい。健一郎も分かっていると思う。もっとやらないと。1段階じゃ足りない。5段階上げて、仕上げていってほしい。迷っていることがあるなら、俺を練習相手に呼んでくれて構わないから」(太田)

 先輩の思いを感じ取ったのか、試合後の文田は「忍先輩に『お前とやれて良かったよ』と言ってもらえるぐらいの内容で日本のレスリング界を引っ張っていきたい」と意気込んだ。先輩が納得のいく猛追い込みで、東京五輪Vを目指したい。

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