レスリング五輪3連覇の吉田沙保里(31=ALSOK)が心身ともに憔悴するなか、あえて試合出場を決めた。

 11日に父・栄勝さんがくも膜下出血で急死(享年61)。吉田はずっと泣き崩れていたが、13日の通夜の前に会見した。国別対抗団体戦女子ワールドカップ(15~16日、東京・板橋区の小豆沢体育館)へ向け「お父さんはずっとレスリング一本で、なんでもレスリングを優先してきた人なのでワールドカップは…」と切り出すと、号泣しながら「出場します!」と言い切った。

 懸念された14日の計量時間も、日本側の働きかけにより国際レスリング連盟(FILA)が開始を1時間15分ずらすことを了承。これで告別式に出席してからでも、間に合う見通しとなった。

 とはいえ、父の傍らに付きっきり。食事の量も減っており「体重が痩せてしまっている。頬もこけて、56キロあったのが一気に2キロ減ってしまった」(栄和人監督)。今大会は53キロ級転向後初の試合だが、2キロオーバーまでOKとあって、計量リミットの55キロを下回っている状態だ。

 それでも吉田は「お父さんも天国で見ていてくれると思う。父のためにも絶対に出場して勝ちたい」と力を込める。チームメートも「沙保里さんが戻ってきたら、なるべく一緒にいて早く元気を出してもらいたい」(登坂絵莉)と、バックアップするつもりだ。

 告別式後すぐに東京に移動し、気持ちを切り替え練習を開始。父譲りのタックルでチームを勝利に導く。