レスリング五輪3連覇の吉田沙保里(31=ALSOK)の父、栄勝(えいかつ)さんがくも膜下出血のため亡くなった。61歳だった。

 女王に悲報がもたらされたのは、この日から始まる代表合宿のため、愛知から東京に移動する車中だった。栄勝さんも全日本コーチとして合宿に参加を予定しており、三重から車で出発したが、津市小舟の伊勢自動車道上り線の路肩に止まった車内で発見された。同市内の病院に搬送され、死亡が確認された。

 吉田は、同乗していた栄和人監督(53)の元に吉田の兄から訃報が寄せられると、動揺して泣き崩れた。掛川で新幹線に乗り換え、急いで三重の自宅へ。最愛の父の死を前にして泣き続け、家族を通じ「申し訳ないですけど、しばらくの間そっとしておいてください」とコメントを寄せた。

 吉田は世界の上位8か国が参加する国別対抗団体戦女子ワールドカップ(15~16日、東京・板橋)のメンバーに選ばれている。栄監督は「とても本人と試合について話ができる状態ではないので明日かあさってに聞いてみたい。ただ、父のために出るような気もします」と、マットに上がる可能性を示唆した。

 今大会は吉田にとって、8階級に変更後初めての国際大会だ。53キロ級で出場するが、体重2キロオーバーまで認められており、実質的にはこれまでと同じ55キロ級となる。栄監督によると吉田は猛練習を積んでおり、左ヒザの内側靱帯を痛めたり、ヘルペスが出るほど自身を追い込んだという。

 とはいえ、最愛の父の死という悲しみは計り知れない。ショックは大きく、欠場の判断をする可能性も十分ある。

 エースが不在になっても、残りのメンバーで戦い抜く。栄勝さんの教え子の土性は「吉田先生のためにW杯で優勝したい」ときっぱり。48キロ級の登坂絵莉(20=至学館大)も「つらいけれど、吉田先生のためにチーム一丸となって戦いたい」と意気込んでいた。