14日に開幕するレスリングの世界選手権(カザフスタン)は、日本代表がメダルを獲得すれば2020年東京五輪代表に内定する重要な大会だ。五輪出場を狙う日の丸チーム展望の後編では、注目が集まる女子を紹介する。

 女子50キロ級では“ママ自衛官コーチ”が選手を支えている。同級には2016年リオ五輪48キロ級金メダルの登坂絵莉(26=東新住建)、世界選手権2連覇の須崎優衣(20=早大)と実力者がいるが、今大会では激戦を勝ち抜いた入江ゆき(26=自衛隊)が初出場で金メダルを狙う。自衛隊体育学校で入江をサポートするのが、12年ロンドン五輪48キロ級金メダルの小原日登美さん(38)だ。

 14年に長男、16年に長女を出産後、昨年4月に同校コーチとして戦いの舞台に戻ってきた。長女出産直前の16年夏、初めてコーチを打診された時は、子供が小さいこともあり相当悩んだ。

 しかし「東京五輪があるのに、ここで頑張らなかったら、いったいどこで頑張るのか」と決意。復帰に先駆け、17年12月の全日本選手権に向けて入江の練習相手を務め、大会ではセコンドに入った。入江は見事に優勝。東京五輪代表戦線へ名乗りを上げた。

 この大会で小原コーチは入江に何げなく「緊張しても大丈夫だよ。そのほうが集中できるから」と声をかけた。大会終了後、入江から「すごく緊張していたけど、それでいいんだと思えてよかったです」と伝えられた。小原コーチは「自分もコーチの言葉で気合が入ったり、我に返ったことがあった。言葉は重要なんだなと思いました」と再認識。自らの経験を踏まえ、試行錯誤しながら指導に当たっている。

 午前5時に起床し、夕食まで作ってから7時には家を出る。日中、子供は保育園に通い、自身は勤務やスパーリングなどの指導で大忙しの日々だが「東京五輪で自衛隊体育学校の選手を優勝させたい」との目標へ全力投球。今、その目標に最も近い存在は入江だけに、カザフスタンでの大暴れに期待が高まる。