【レスリング】最強女子復権へ 地獄の10人掛け

2019年09月12日 16時30分

十日町合宿で、向田は綱登りにも挑戦した

 14日に開幕するレスリングの世界選手権(カザフスタン)は、日本代表がメダルを獲得すれば2020年東京五輪代表に内定する重要な大会だ。五輪出場を狙う日の丸チーム展望の後編では、注目が集まる女子を紹介。“地獄の10人掛け”で、今大会も金メダル量産を狙っている。

 女子の完全復活へ、鬼トレーニングが導入されていた。「次!」「最後まで頑張れ!」と激しいかけ声が響く。8月末、新潟・十日町市の山中にある桜花レスリング道場で行われた“地獄の10人掛け”だ。

 この日は53キロ級代表の向田真優(22=至学館大)が休む間もなく選手やコーチ、10人と次々と対峙。足がもつれても息が上がっても休めない。「10人掛けは気持ちをつくっていかないとできない」(向田)。1分間のスパーリングを10本、さらにそのあと20秒の補強(腹筋など)を10本と過酷極まりない。

 8月上旬の北海道合宿から10人掛けを導入した。ここまで厳しい“掛け練習”は初めてだ。日本レスリング協会の笹山秀雄女子強化委員長(51)は「試合の最後の最後、本当にきつい場面になった時『なにくそ』の気持ちを出してほしかった。グダグダになっている時に最後(ポイントを)取りにいける、攻め続ける精神を持てるようにしたい」と理由を話す。選手にも導入前に狙いを説明した。

 苦い記憶がある。2016年リオデジャネイロ五輪では劇的な逆転勝利もあって、女子は金メダル4つを獲得。しかし、昨夏のジャカルタ・アジア大会ではまさかの金メダルゼロに終わった。昨年4月にはパワハラ問題で栄和人氏(59)が強化本部長を辞任した。特に栄氏の教え子が多い女子にとっては、難しい状況だったことは否めない。「もっと追い込む練習」の必要性も叫ばれ、仕切り直しを迫られた。

 笹山委員長は「アジア大会の時はチームではなく、個々になっていた。個人競技でも、チームで金メダルを取りにいくという気持ちが必要。10人掛けをやると周りの選手も頑張れと応援して、苦しくても本人に力を出させようとする。チーム力も上げたいのです」。強い日本女子復活へ、最後の最後まで手を尽くす。