2020年東京五輪の出場権がかかるレスリングの世界選手権が、14日にカザフスタンで開幕する。今大会で5位以内なら五輪出場枠が国に与えられ、メダル獲得なら当該選手が代表内定という大一番だ。そこで本紙は前後編の2回にわたり、五輪出場を狙う日の丸チームを紹介。前編の男子では2連覇に挑むフリー65キロ級代表の乙黒拓斗(20=山梨学院大)が「決意」を語った。

 男子フリーでは、昨年、日本史上最年少で優勝した65キロ級の乙黒が連覇を目指す。

 常に攻め続ける超攻撃的スタイルが特徴だ。フリーのコーチで2012年ロンドン五輪66キロ級金メダルの米満達弘氏(33)も「攻撃がまるで止まらない。タックルに入ったあと一拍置いてしまう選手が多い中、動きが止まらず、次の技をたたみかける、それが試合中、ずっと続く。なかなかこういう選手はいません」と舌を巻く。豊富な練習量に裏打ちされたスタミナがあるからこそだ。

 乙黒は「攻めるのが自分の代名詞というか、いい部分だと思っているし、周りの人もわかっている。それがなくなったら僕ではなくなる。意識して最後まで攻め切る練習を年中やっています」と攻めにこだわりを持ち、練習に励んでいる。

 今年に入り、右ヒザ痛などで十分な練習を積めない日々が続いた。6月の全日本選抜選手権では、16年リオ五輪57キロ級銀メダルの樋口黎(23=日体大助手)に敗れ、プレーオフで世界選手権代表の座を勝ち取った。「自分がしっかり準備しないと、ああいう結果になる。気の緩みは許されない」(乙黒)と学んだことは多かった。苦い経験を糧に連覇&五輪切符をつかみ取る。