“価値ある敗戦”だった!? レスリングのアジア選手権(中国)女子57キロ級で銅メダルを獲得した五輪4連覇の伊調馨(34=ALSOK)が27日、成田空港に帰国した。

 2016年リオ五輪以来の国際大会復帰戦を優勝で飾ることができず不安説も出たが、一夜明けたこの日、伊調は「気持ちは変わらず。アジアの強豪と戦えたことを生かして明治杯(6月の全日本選抜選手権)で優勝ができるように頑張りたい」と淡々とコメント。一方で「一番はこの大会に参加できたこと」と収穫も口にした。

 試合中に相手の頭が当たって差し歯が折れたことなどを踏まえて「トラブルもあったし、コンディションの面、試合の技術面からたくさんのことで学ばせてもらった」。そのうえで「負けたことで明確になったというか、これをやっていけば自分がもっと強くなれるというのが分かった」とあくまで前を向いた。

 ただ、来年の東京五輪に向けた道のりは簡単ではない。アジア勢のレベルが上がっており、階級が変わったことによる調整方法の微妙な違いなど課題は多い。

 日本代表の笹山秀雄監督(51)は「いい面、悪い面が見えた大会だった」と全体を総括。その中で伊調については「あそこ(準決勝)で勝っていたら、いつかどこかでプレッシャーや不安が表れたかもしれない。そういう意味では逆に負けて良かったのでは。気持ちも楽になったと思うし、東京五輪の道も閉ざされたわけでもない。この敗戦が次につながると思っている」と本紙に指摘した。意外にも“価値ある負け”になったという。

 伊調自身も「今は目の前の一日一日を過ごしていくということ」と焦る様子は全くない。メンタルの強さはこれまでの実績で証明済みだけに、五輪5連覇への挑戦は始まったばかりだ。