「吉田の負けは五輪前のいい教訓」

2012年05月31日 12時00分

 五輪まで残り2か月、日本選手団に衝撃が走った。レスリングの国別対抗団体戦女子W杯決勝(27日、東京・代々木第二体育館)、55キロ級で五輪3連覇を目指す吉田沙保里(29=ALSOK)がロシアのワレリア・ジョロボワ(19=ロシア)に1―2とまさかの逆転負け。連勝記録が58でストップしたのだ。4年間負けなしの女王は本番直前の悪夢に号泣。絶対視されていた金メダルは大丈夫なのか? 北京五輪で日本選手団団長を務めた日本レスリング協会・福田富昭会長(70)に〝衝撃敗〟の真相を直撃した。

 

 ――ロンドン五輪で金メダル獲得を絶対視される吉田がまさかの敗戦

 

 福田会長:4年前、北京五輪と同じことが起こりました。あの時(敗戦)も、五輪前のW杯(中国)でしたね。「勝とう」「勝たなきゃいけない」と、慎重になりすぎていた。

 

 ――得意のタックルを決め切れなかった

 

 福田:確かに世界もどんどん強くなっている。研究もされているでしょう。でも、私が見る限り、今回は精神的な側面が大きい。プレッシャーもあったでしょう。でもこれが五輪じゃなくて、逆によかったんです。いい教訓になった。北京五輪でも敗戦を教訓にして金メダルを取った。心の切り替えをしっかりしてくれれば大丈夫。

 

 ――ただ、4年前のW杯は1月開催。今回は五輪まで2か月しかないが

 

 福田:「自分が強いんだ」というプライドを持ち直してほしい。プレッシャーもあるけれど、そこは自信、女王というプライドを持って五輪に臨めばいい。

 ――伊調馨(63キロ級)と吉田、2人の3連覇の可能性は

 

 福田:ケガをしなければやると思いますね。ケガしたり、精神的に崩れたりせず、今までのように強気でいってくれれば堅い。2人は(世界で)すごく評価が高い。国際連盟での吉田のあだ名は「マシーン」っていうんですよ。正確なタックルをバシーンと決めるでしょ。かつて日本の「アニマル渡辺」渡辺長武(おさむ=東京五輪金メダリスト)ってのが「スイス時計」ってあだ名をつけられた。正確にタックルに入るから。それで「吉田は機械みたい」だと。馨は「ストロングウーマン」ですね。

 

 ――女子は全階級で金メダルの期待がかかる

 

 福田:小原(日登美、48キロ級)は独特の動き、タックルなど、昔のレスリングを取り戻してくれれば、チャンピオンは問題ないと思う。浜ちゃん(浜口京子、72キロ級)は考え方次第。物の考え方をフレキシブルにできれば。練習のときと試合のときで体の動き、キレの差が大きすぎる。練習のときの浜ちゃんなら金メダル取りますよ。同じ考え、動きをしてくれれば、金4つの可能性はありです。

 

 ――男子の24年ぶりの金メダル獲得は

 

 福田:やっぱり湯元兄弟(フリー55キロ級・進一、同60キロ級・健一)、66キロ級の米満(達弘)、グレコ55キロ級の長谷川(恒平)、同60キロ級の松本(隆太郎)とかは金メダルの有望選手。フリー1、グレコで1つは金メダル行くでしょう。レスリングは「メダルを取るものなんだ」という精神文化がありますから。「八田イズム」で知られる八田さん(八田一朗元会長)以来そう。みんなの心の中に脈々と流れていると思います。

 

 ――日本選手団全体の見通しは

 

 福田:結局どの競技でも、日本人の生真面目さが発揮される気がしますよ。なんだかんだで柔道はメダルを取る。それに体操、水泳、陸上、レスリング。これが核となって、他の競技に影響していくと思う。そんな予感がします。世界のレベルは上がっているけれど「日本人の真面目さ」が勝つのかな、と。日本は弱くない、強いです――。