レスリングの全日本選手権最終日(23日、東京・駒沢体育館)、女子57キロ級決勝で五輪4連覇の伊調馨(34=ALSOK)が、リオデジャネイロ五輪63キロ級金メダリストの川井梨紗子(24=ジャパンビバレッジ)に劇的な大逆転勝利を収め、3年ぶり13度目の優勝を果たした。

 前日(22日)の1次リーグ初戦で1―2で敗れ、実に日本人選手相手には17年ぶりとなる黒星を喫した川井と決勝で再戦。第1ピリオドで場外に出されて1ポイントを失った伊調は、第2ピリオドでも消極的姿勢の選手に与えられる30秒のアクティビティタイムでポイントを奪えず、0―2とリードを許す。しかし、その後、逆にパッシブで1ポイントを返すと、試合時間残り10秒で起死回生のタックルを決めて2ポイントを奪い、3―2と劇的な大逆転勝利を収めてみせた。

 五輪女王対決を制した伊調は優勝者インタビューで「厳しい戦いになると思ってたんですが、最後取れてよかったです。久々の緊張感の中で、たくさんの方に楽しんでレスリングをやれってアドバイスをもらった。まだまだ自分の中では伸びしろがあるというか、上げていけると思っているので。今日の課題を生かしていきたい。まずは今日の反省をしっかりして6月に向けて上げて、その先に東京五輪が見えてくるのかなと思います」と力強く宣言した。

 今年1月に発覚した当時の強化本部長・栄和人氏(58)のパワーハラスメント問題が大騒動に発展した伊調は、10月の全日本女子オープンで復帰。五輪5連覇へ向けて「本当の意味での復帰戦」と位置づけた全日本選手権に出場。前日には、復帰後初めて東京五輪挑戦を明言した。

 リオ五輪後の長期ブランクを乗り越え「新旧女王対決」と言われた川井との大一番で雪辱を果たし、前人未到の五輪5連覇へ、絶対女王が完全復活を果たした。