【レスリング世界選手権】快挙19歳! 乙黒拓斗が日本男子史上最年少の金=フリースタイル65キロ級

2018年10月23日 16時30分

乙黒(上)は開始直後の豪快な投げで流れを引き寄せた(ロイター)

【ハンガリー・ブダペスト22日(日本時間23日)発】レスリングの世界選手権第3日、男子フリースタイル65キロ級で初出場の乙黒拓斗(おとぐろ・たくと、19=山梨学院大)が決勝で8月のアジア大会覇者のバジュニーシュ・バジュラン(インド)を16―9で下し、日本男子の史上最年少優勝を果たした。日本協会によると、従来の記録は1974年大会を制した高田裕司(64=山梨学院大監督)の20歳6か月。試合途中のアクシデントもはねのけ、五輪、世界選手権を通じて初の10代金メダリストとなった。57キロ級で昨年覇者の高橋侑希(24=ALSOK)と92キロ級の松本篤史(30=警視庁)はともに3位決定戦を1点差で制し、銅メダルを獲得した。

 快挙を成し遂げた瞬間、乙黒拓はマットにヒザをつき、安堵の表情を浮かべた。「東京五輪までに世界選手権で優勝するという目標を達成できたことはうれしい」。師である高田監督の記録を更新したことについては「いつも教えてもらっている監督の(最年少)記録を超えたのは申し訳ないけど、ちょっとうれしい」と表情を緩めた。

 決勝はまさに死闘だった。序盤に場外と豪快な投げ技を決めて5点を先制したものの、すぐにバックをとられて追い上げられる展開。第1ピリオドは7―6と辛うじてリードして終えたが、第2ピリオド序盤に思わぬ事態に見舞われた。

 相手の攻撃をしのいだ際に右足首をひねり、マットにあおむけに倒れた。治療をリクエストしたが、出血のある負傷ではないことでレフェリーはこれを拒否。満足な治療も受けられずに試合を再開させられた。

 痛みを感じながら最小限の失点でこらえ、勝利への執念で逆襲。タックルから得点を重ねてリードを広げると、最後まで守勢に回ることなくインドの強豪をシャットアウトした。

 日本協会専務理事でもある高田監督は試合前から勝利を確信していた。協会広報から「(乙黒拓が)勝った時は報道陣の前に出てください」と言われると「じゃあ、ヘア(髪形)とかきれいにしておかないとな」とニヤリ。東京・帝京高時代に全国高校総体3連覇を果たし、2015年には世界カデット選手権を制し、レスリング界を背負う逸材と期待された愛弟子について「彼のレスリングは異次元。投げられた時にも猫みたいに回転するのは天性で、平成の怪物」と手放しで絶賛する。自身の記録を更新されたことについても「いいことだよ」と納得顔だった。

 出身の山梨県を離れ、JOCのエリートアカデミーで成長を遂げた乙黒拓だが、マットを離れれば大ファンを公言する乃木坂46の白石麻衣(26)の動画を見て息抜きをするという現代っ子だ。「追う立場も追われる立場も、自分としてはそんなに変わりない。2020年までにもっと上を見ながら向上していきたい」。男子レスリング界のニューヒーローは、最大目標である東京五輪の金メダルに向けて努力を惜しむつもりはない。