レスリングで五輪4連覇の伊調馨(34=ALSOK)らに対するパワーハラスメントが認定された日本協会の栄和人前強化本部長(57)が14日、全日本選抜選手権の会場(東京・駒沢体育館)で会見を開き、伊調、指導する田南部力コーチ(43)らに対し謝罪の言葉を述べた。

 パワハラ認定後、栄氏が公の場に姿を現すのはこの日が初めて。「伊調選手、田南部コーチ、レスリング協会関係者、内閣府をはじめとする関係省庁、さらにこれまでレスリングを応援してくださった国民の皆様に、多大なご迷惑をおかけしたことを心からおわび申し上げます」と、神妙な面持ちで頭を下げた。

 4月に強化本部長を辞任。常務理事も23日の評議員会で正式に解任が決まり、役職はなくなる。「今後二度とこのようなことが起きないよう、常に他人に敬意を持って接することを心掛けたい。協会が実施する改善策プログラムに添って、一指導者として日々精進したい」と出直しを誓った。

 一方、田南部氏は「協会はカメラの前では謝罪したいと言うが、僕らのほうには(接触は)一切ない。ただのパフォーマンスだと思っている」と不信感をあらわに。また、栄氏には今回の問題で大学の指導も退くべきではという意見があるのも事実だが「至学館大にも五輪を目指す選手がいる。望まれるのであれば、少しでも力になれるようにと今は思っているが、もっと勉強してどういう形で携わったらいいかはゆっくりまた考えたい」と話し、この日は観客席から試合を見守った。

 日本協会幹部によれば、8月からハラスメントに対する指導者講習会がスタート。複数回開講し、これまで以上に危機感を持った内容になるという。栄氏も受講する見込みだ。この日は至学館大勢が2階級を制覇し、世界選手権(ブダペスト)代表に決まった。吉田沙保里(35=至学館大職)がセコンドに就くなど、新たな動きも見えた女子レスリングの名門の試行錯誤が続く。