【テニス】ツアー初V 大坂なおみ突如覚醒の理由を解説者・佐藤武文氏が分析

2018年03月20日 16時30分

優勝トロフィーを前に笑顔の大坂(ロイター=USA TODAY Sports)

 テニスのBNPパリバ・オープン(カリフォルニア州インディアンウェルズ)女子シングルスでツアー初優勝を飾った世界ランキング22位の大坂なおみ(20=日清食品)が日本のテニス界に衝撃を与えている。4大大会に次ぐ格式の「プレミア・マンダトリー大会」を制した若き女王は突然、覚醒したが、その裏にはいったい何があったのか。GAORAテニス中継解説者の佐藤武文氏(47)が“大変身”の理由を語った。

 決勝でダリア・カサキナ(20=ロシア)をストレートで破った大坂の快挙に、日本は祝福の声に包まれた。松岡修造氏(50)はブログで「別人のようだった」と絶賛。日本テニス協会の倉光哲理事(73)は「目頭が熱くなった」と興奮を隠さなかった。指導者として女子テニス界に携わる佐藤氏も驚くばかりだ。

「『マジかよ!?』とみんな思っています。それぐらいの衝撃はある。ノーシードでここまで勝っちゃうっていうのはまれ中のまれ」。通常「プレミア・マンダトリー」のような大会は、下部大会で実績を積んだ選手が勝ち上がっていくもの。しかし、大坂は順序など関係ないとばかりに、いきなり“準4大大会”を制圧したのだ。

 3~4年前、大坂は佐藤氏の教え子と国内外で練習していた時期があった。「この子はうまくなるというのは間違いなくあった」との印象を抱いた佐藤氏が、特に注目したのはサーブ。「(並の選手では)どうにもならない」とこの時から手がつけられないほどの強力な武器だったという。

 確かに大坂の200キロを超えるサーブは他の追随を許さないものがあった。しかし、それでもツアーでは勝てなかった。大坂のテニスに変革をもたらしたのは、本紙でも昨報した昨年末のサーシャ・バイン氏(33=ドイツ)の新コーチ就任。バイン氏は元世界1位のセリーナ・ウィリアムズ(36=米国)らのヒッティングパートナーを務めたことで知られる。

 大坂にとってS・ウィリアムズは憧れの選手。バイン氏の言葉は心に響き「彼は『すべてのボールをハードヒットするのではなくて、確率を下げてもあなたは絶対勝てるから』とアドバイスした」(佐藤氏)。大坂はテニススタイルを一から見直し、その成果はすぐに攻守に現れた。最も変わったのは強打の使い方だ。

「大坂選手はいつもエースを取りにいこうというサーブが多かった。今はファーストからわざと120キロぐらいの遅いサーブを打つ時がある。そうすると相手は速いサーブが来た時、分からなくなる。ストロークも同様。全部トップスピードだと慣れられる。緩急をつけると相手は混乱する。相手が嫌がることを客観的にできるようになった」(佐藤氏)

 パワー一辺倒に押し込むのではなく、頭も使い、クレバーに戦う。それが躍進の理由だという。

 準決勝では同1位のシモナ・ハレプ(26=ルーマニア)を撃破。日本女子で世界トップの選手に勝ったのは伊達公子氏(47)以来、2人目だ。その伊達氏と比較して佐藤氏は「伊達さんの場合は合気道のように相手の力を利用する。大坂選手はそのパワーを出すほう。正直、日本にはいない、初めてのタイプ」。

 20日開幕のマイアミ・オープンでは1回戦でS・ウィリアムズと初対戦する。いきなり正念場だが、大坂には大チャンスでもある。佐藤氏は大坂の4大大会優勝の可能性について「もう少し元トップ10の選手に勝たないと、本人の中で自信というのが出てこないと思う。マイアミでベスト4、8ぐらいなら可能性が高まる」と話した。

 怪物は無限大の可能性を秘め、2つ目の頂点に向かう。

 ☆さとう・たけふみ 1971年2月20日生まれ。東京都出身。亜細亜大では関東学生ダブルス2連覇、インカレダブルスベスト4、全日本選手権ダブルスベスト16の成績を残す。25歳で引退。現亜細亜大テニス部コーチ。スポーツチャンネル「GAORA」やDAZN(ダ・ゾーン)のテニス解説者を務める。また自身のアパレルブランド「TOKYO UNDERGROUND TENNIS CLUB」のディレクター、デザイナーとしても幅広く活動している。

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