男子テニス世界ランキング14位の錦織圭(27=日清食品)が、米国IMGアカデミー時代の師・米沢徹氏(58)から再起のエールを送られた。右手首の腱断裂で8月のウエスタン&サザン・オープン以降、年内欠場を決めてキャリアの岐路に立たされているが、米沢氏は「まだうまくなる」と「ピークを過ぎた」説に異を唱えた。一方、自身が指導に携わるジュニア世代の現状や「錦織2世」誕生への道についても語り、テニス界の未来を示した。

 現在は錦織のコーチングには携わっていない米沢氏だが、本紙の取材にこう答えた。「これから錦織を見て育つ世代は、また彼を追いかけていくんじゃないですか。いかないとボクたち(指導者)も困りますから。錦織にはもうちょっと上を、グランドスラムで優勝してほしいですよね」。独特の言い回しで、再起のメッセージを送った。

 右手首の負傷については「あのレベルで頑張っているだけでもすごいので、体にも負担がかかっている。それが手首にきたっていうこと」と捉える。2014年全米オープン準優勝を最後に、好成績を収めておらず「ピークを過ぎたのでは」との声も聞こえてくるが、米沢氏は否定した。「いやいや、まだうまくなっているしこの1年、2年でレベルアップしている。(ロジャー)フェデラー(36=スイス)や(ラファエル)ナダル(31=スペイン)と比べても若い。まだ伸びる年齢だからいけると思います」

 今季、ツアー未勝利についても「全米に向けては、またいい調子が戻ってきている印象だった。いい顔してやっていた」と復調を感じていたことを明かした。

 錦織の原点は米フロリダのIMGアカデミーにある。そこで13歳から2年間、マンツーマンで指導したのが米沢氏だった。「ゲーム性のある、うまいテニスするなあと。将来楽しみだなと思いましたよ」。当時の指導経験は、米沢氏にとっても特別なもの。「多彩なプレーをしていると一生伸びる」との確信は、今も変わらない。

 現在は「第2の錦織」育成に心血を注ぐ日々だ。9歳から18歳まで約10人の生徒を指導している。一緒に寝泊まりしている生徒もおり、米沢氏も「寝る暇がないくらい。たくさん志の高いジュニアが周りにいますので。その子たちのために、24時間を使っています」と言うほど忙しい。

 指導で心掛けているポイントは「オールラウンド」だ。世界的なテニスの進化と傾向を読み解くと「(グリゴル)ディミトロフ(26=ブルガリア)とか(アレクサンダー)ズベレフ(20=ドイツ)とか、トップにくる選手は多彩になりましたよね。ジュニアも世界的に見ると、徐々にいろんなショットがオールラウンドになってきている。そこに着目してやっている人たちっていうのは、今後残ってくると思う」と力を込めた。

 テニス界の底上げを図るという思いは、指導者も選手も同じ。「日本のジュニアは層も厚いし、テニスのうまさも世界的にはダントツでうまい。それは、錦織の影響で『日本人でも頑張れば、世界のトップ10にいけるんだ』っていう思いでやっているから」と話す米沢氏は、錦織の復帰を心待ちにしている。