男子テニスの楽天ジャパン・オープン(東京・有明テニスの森公園)が中国の“爆買い”に頭を悩ませている。

 9日に行われたシングルス決勝は、世界ランキング15位の“悪童”ニック・キリオス(21=オーストラリア)がダビド・ゴフィン(25=ベルギー)を破って初優勝。集客も日本のエースの同4位・錦織圭(26=日清食品)の2回戦敗退による不安を払拭し、大成功を収めた。平日でも1万人を下回ることはなく、日本テニス協会は「男子の迫力ある試合を見たいというファンが多いということ。これで満足はしないけど、確実に定着してきている」(広報部)とテニス人気の拡大を喜んだ。

 一方で新たな課題にも直面している。同時期に中国・北京では中国オープンが開催されているが、楽天と同じ格付けの大会にもかかわらず、今年も同2位アンディ・マリー(29=英国)や同4位ラファエル・ナダル(30=スペイン)、錦織のライバルで楽天準優勝3回の常連だった同6位のミロシュ・ラオニッチ(25=カナダ)などビッグネームが参戦。マリーが今季5勝目、ツアー通算40勝目を挙げ、華々しく幕を閉じた。

 賞金総額は楽天の2・5倍以上、翌週に上海マスターズを控えている利便性もあるが、日本テニス協会幹部は裏事情をこう解説する。

「(ノバク)ジョコビッチやナダルは出るだけで1億5000万円ぐらいいってますよ。それまでは欧州でもジョコビッチとかナダルも高いといっても1億円いかないくらいだったのが、中国が一気につり上げた。だから世界中が困っている」

 中国では大会に関わるだけで大金が手に入る。マネーゲームでは日本は完全にお手上げ状態なのだ。

 楽天は将来的なマスターズ大会昇格も視野に、関係各所も努力を惜しまない。しかし「僕らは質で勝負しようと言っているけど、大金が動けば選手やマネジャーがそっちを、ってなる」(前出幹部)のが現実。この流れを止めることはできるのか。