【イタリア・ローマ14日(日本時間15日)発】テニスの「イタリア国際」男子シングルス3回戦、世界ランキング6位の錦織圭(25=日清食品)は同34位のビクトル・トロイツキ(29=セルビア)に6―4、6―3でストレート勝ちした。15日に行われる準々決勝ではランキング1位のノバク・ジョコビッチ(27=セルビア)と対戦するが、この試合は「全仏オープン」を占う大一番となる。

「結構、主導権を握れた。自分のテニスも感覚が良くなった」とこの日の試合を振り返った錦織は第1、2セットともに先行し、過去3勝1敗のトロイツキにストレート勝ちで、危なげなくベスト8進出を決めた。

 次に顔を合わせるジョコビッチとの対戦成績は2勝3敗。今大会と同じクレーコートでは、2010年の全仏で1度だけ対戦し、ジョコビッチが勝利している。

 とはいえ、このデータが何の材料にもならないことは明白で、日本テニス協会の植田実強化本部長(57)も「今回はどちらが勝ってもおかしくないレベルにいる。明らかに今までのものが参考にならないですよね」と声を大にした。

 その上で、植田強化本部長はジョコビッチ戦に向かう錦織の胸中を次のように察した。

「今の彼には(敗戦では)収穫とは思わないんじゃないですか。勝つことが収穫で、フレンチに向かうことしか考えていないと思います。ここで勝たないと、フレンチで勝つということにつながらないわけですから」

 24日開幕の全仏が目前に迫っている中、連戦の疲れもある。ここでリスクを冒して難敵と真っ向勝負するより、全仏での対戦を念頭に置いて「誰よりも安定したプレーをする選手」と錦織も評価する、ジョコビッチの状態や攻略法を探る戦術に切り替えるのも一つの方法だろう。

 だが、そんな後ろ向きな考えは今の錦織には全くないという。バルセロナ・オープン2連覇、マドリード・オープンベスト4と連戦して乗り込んだ錦織に対し、全仏制覇に照準を合わせるジョコビッチはマドリードを回避。家族とリフレッシュした後、練習のため余裕を持ってローマ入りするなどコンディションの差は歴然だ。

 しかし、この日のジョコビッチは世界68位のトーマス・ベルッチ(27=ブラジル)に第1セットを落とし、5―7、6―2、6―3と勝利に2時間かかるなど、つけ入るスキはありそう。ここで王者を撃破することができれば、ローランギャロスでの4大大会初制覇にこれ以上ない弾みがつく。

 また、この日の勝利で世界ランク4位返り咲きへ大きく前進した。同4位のミロシュ・ラオニッチ(24=カナダ)が欠場し、すでに錦織が上回ることは確定。5位のトマーシュ・ベルディハ(29=チェコ)、7位のラファエル・ナダル(28=スペイン)の成績次第だが、4位に復帰すれば、全仏で準決勝までトップ3と対戦しないだけに少しでもポイントを上積みしたいところだった。

 準々決勝に向けて「長いラリーを制することができるように我慢強くやりたい」と話した錦織。目指すのは勝利のみ、だ。