【スペイン・バルセロナ21日発】テニスのバルセロナ・オープン男子シングルスで、前年覇者で世界ランキング5位の錦織圭(25=日清食品)は、初戦の2回戦で同85位のテイムラズ・ガバシビリ(29=ロシア)に6―3、6―4でストレート勝ち。23日の3回戦に駒を進めた。今季のクレー(赤土)コート初戦で貫禄を示した錦織は、全仏オープン(5月24日開幕)前哨戦の今大会で、“赤土の王者”ラファエル・ナダル(28=スペイン)攻略を狙う。

 全仏オープンの行方を占うクレー初戦で、錦織が完璧な試合運びを見せた。セカンドサーブからの得点率は驚異の90%を記録。ガラ空きとなったスペースに余裕を持ってボールを叩き込むシーンが目立ち、ガバシビリに反撃の糸口すら与えなかった。

 第1セット第2ゲームをブレークした錦織は、続く第3ゲームで早くもネットプレーを成功させる。球足が遅いコートをものともせず、素早い仕掛けの「前衛速攻」スタイルで翻弄。第7ゲームに初めてブレークポイントを握られたが、セカンドサーブでエースを奪い、あっさりとキープした。

 第2セットは、まさに自由自在だ。第5ゲームにはガバシビリのサーブを回り込んでフォアで打ち返し、鮮やかに得点。ガバシビリのこの日3度目のダブルフォールトで錦織がブレークする。ラケットを投げ捨てたガバシビリを尻目に、終始圧倒した錦織は正面へのエースでピリオドを打ち、わずか1時間7分で試合を終わらせた。

「クレーの初戦で少しナーバスになったが、すごく堅実なテニスができた。とてもうれしい。厳しい大会になると思うけれど、ベストを尽くす」。客席の歓声に手を振って応える姿には、前年覇者の風格が漂った。

 快調な滑り出しで高まるのが、ナダル超えの期待だ。今大会は、錦織が4大大会初Vを狙う全仏の前哨戦でもある。ナダルとは互いに順当に勝ち進めば、決勝(26日)で相まみえる。そこで全仏5連覇中の赤土の王者から初勝利を挙げれば、大きな弾みがつくことは間違いない。

 昨年はマスターズ大会のマドリード・オープン決勝でナダルと大接戦を演じた。その時のプレーを強く脳裏に焼きつけるテニス関係者は「フレンチ(全仏)で優勝するためには、一回も勝ったことのないナダルに勝つしかない。正直、難しいかなと思う。ただ、昨年クレーコートのシーズンで見せた早めのテンポの仕掛けができれば、錦織にチャンスはある」と“金星”の可能性はあるという。

 この日の戦いぶりも、錦織の持ち味が十分に発揮されたもの。3月のマイアミ・オープンが終わり、米国で約2週間、クレー対策を練ってきた“エアK”が、満を持してナダルの牙城に挑むことになりそうだ。