【フロリダ州マイアミ30日(日本時間31日)発】テニスのマスターズ大会、マイアミ・オープン男子シングルス3回戦で世界ランキング5位の錦織圭(25=日清食品)は、同39位ビクトル・トロイツキ(29=セルビア)を6―2、6―2のストレートで破り、4回戦に進出した。進化が止まらないエアKのテニスに、日本テニス界の重鎮からは早くも錦織の“横綱昇進”を認める声も飛び出している。

 元世界12位のトロイツキは2013年に血液サンプルの提出を拒否し、ドーピング違反で1年間の出場停止処分を受けた経歴を持つ。昨年7月には世界ランク847位まで降下したが、1年もたたないうちにトップ戦線に復帰した。

 そんなやっかいな“上がり馬”も錦織の相手ではなかった。第1セット、錦織は3度のブレークを奪って、トロイツキを圧倒する。第1サーブはこの日も失敗が目立ったものの、芸術的なバックハンドがさえ渡り、打ち合いでポイントを量産。トロイツキは錦織の執拗な返球に我慢のプレーができず、ミスを重ねた。

 第2セットもペースは錦織だ。第2ゲームには鮮やかなダウン・ザ・ライン(サイドラインと平行に打つショット)が炸裂。続くゲームをブレークした。トロイツキはメディカルタイムアウトをとり腰のマッサージを受けたが、錦織は攻撃の手を緩めず第7ゲームもブレーク。トロイツキにつけ入る隙を与えず、4回戦進出を決めた。

 昨年4強に進出した相性のいいコートで躍動する錦織は「今日はいいゲームだった。ストローク戦に持ち込めばチャンスは増えると思っていた。バック(ハンド)の調子はいいですね。ダウン・ザ・ラインにも思い切って振っていけた」と好調ぶりをアピールした。

 世界5位の戦いぶりも板についてきた。日本テニス協会常務理事の福井烈氏(57)は、今季の錦織について「相手だって錦織が強いのは分かってますから100%で来る。それをしっかりガッと受け止めて、途中から自分のペースに持っていく横綱みたいな強い人の戦い方ができている」と高く評価する。相手に研究され、序盤戦で第1セットを落とす試合があっても錦織は勝ち抜いてきた。その強さはまさに横綱級というわけだ。

 今大会は同2位のロジャー・フェデラー(33=スイス)が出場せず、同3位のラファエル・ナダル(28=スペイン)、昨年全豪Vで同8位のスタニスラス・ワウリンカ(30=スイス)はすでに敗退。波乱が続出する中で錦織の“横綱相撲”はひと際、強烈な印象を与えている。8強をかけ31日(日本時間1日早朝)に行われる4回戦の相手は同20位のダビド・ゴフィン(24=ベルギー)に決まったが、悲願のマスターズ初優勝へ視界は良好だ。