【オーストラリア・メルボルン発】これがトップ5の宿命か。男子テニスの世界ランキング5位・錦織圭(25=日清食品)は4大大会初制覇を狙う全豪オープンシングルス2回戦で、同86位イワン・ドディグ(30=クロアチア)に4―6、7―5、6―2、7―6で逆転勝ちしたものの、紙一重の内容。ランク下位選手から厳しいマークに遭っており「全米オープンのようにはいかない」と今後を不安視する声が上がっている。

 錦織はドディグに直近の2試合でともに勝利していたが、この日は立ち上がりからドディグの猛攻にタジタジ。自らのミスでチャンスを潰し、第1セットを落とした。ドディグの再三のサーブ&ボレーに手を焼き、第4セットもタイブレークまでもつれる。最後は錦織が驚異の勝負強さを発揮したが、最後まで気の抜けない内容だった。

 錦織の調子以上に目についたのが、ドディグの充実ぶり。気合が乗ったプレーで緩急をつけ、錦織を前後に揺さぶった。昨年10月の楽天ジャパンオープンで対戦した時とは別人のデキだった。

 この“豹変”は何を物語っているのか。「ほかの選手にとって(錦織は)一番注意する存在だと思います。ものすごくマークされる」と指摘するのは日本テニス協会の植田実強化本部長(57)だ。

 準優勝した全米ではほとんどノーマークで、錦織は3回戦までストレートで勝ち上がることができた。しかし、全豪ではV候補に挙げられ、戦前から注目の的。ドディグだけでなく、1回戦のニコラス・アルマグロ(29=スペイン)も第1セットからエンジン全開で襲い掛かってきた。

 今後、シード選手と当たればなおさら包囲網は強まるというのが植田氏の見方だ。「フェデラーはナダル以上に錦織をケアするでしょうし、ジョコビッチも相当錦織をケアするでしょう。第2週(4回戦以降)は全米オープンよりスムーズにいかないかもしれない」

 もちろん、錦織も全米の時から進化。サーブのバリエーション、多彩な攻撃、勝負どころでのギアチェンジなどトータルで成長の跡を感じさせており、全米よりワンランク上のせめぎ合いに対応は可能だ。3回戦の相手はブリスベン国際1回戦で勝利したランキング38位のスティーブ・ジョンソン(25=米国)。錦織は「相手は失うものが何もないと思って打ってくる。メンタルの闘い」と気を引き締めたが、頂点までの道のりはまだまだ険しい。