【英国・ロンドン11日(日本時間12日)発】勝って決める。男子テニスの年間成績トップ8による今季最終決戦、ATPツアー・ファイナル1次リーグB組第2戦(O2アリーナ)、世界ランキング5位の錦織圭(24=日清食品)は同2位のロジャー・フェデラー(33=スイス)に3―6、2―6のストレートで完敗し1勝1敗となった。13日のリーグ最終戦は4勝1敗と相性のいい同8位ミロシュ・ラオニッチ(23=カナダ)が相手。勝てば準決勝進出がほぼ確定する。

 フェデラーに力の差を見せつけられた錦織は「ボールを速くとらえて、チャンスを与えてくれなかった。今日のフェデラーは本当に良かった」と完敗を認めた。

 少年時代から憧れの存在。全力で倒しにかかったが、変幻自在のサーブに翻弄され、得意のストロークで打ち負かされた。錦織は「サーブも取れると思っていたけど、ほとんどエースだったり、セカンドサーブもスピードを上げたり、変化をつけられた。入っていく隙がなかった」と天を仰いだ。

 フェデラーとの対戦成績は2勝2敗の五分で、難敵のアンディ・マリー(27=英国)を撃破した勢いで臨んだが、試合は接戦になるどころか攻略の糸口すらつかめない。第1セットを落とすと、第2セットも第3、第7ゲームをブレークされた。4大大会で通算17度の優勝、ファイナル6勝といずれも歴代最多を誇るフェデラーに歯が立たなかった。

 それでも錦織はラオニッチ戦に勝てば、準決勝進出がほぼ決まる(別項参照)。この日は痛めた右手首にテーピングを施し、第1セット後には入念なマッサージを行うなど、多少の不安はあるものの、対ラオニッチは通算4勝1敗と大きく勝ち越している。今季も10月の楽天オープン決勝で勝利するなど相性のいい相手だ。

 さらに会場も味方しそうだ。ラオニッチは196センチの長身から繰り出す時速200キロ超えのサーブが最大の武器で、錦織も楽天オープンで22本ものエースを決められた。通常室内コートでは風の影響を受けないためサーブの威力は増すものだが、今大会のコートは球足が遅いのが特徴。得意のストローク勝負に持ち込めそうだ。

 そして何よりモチベーションとなるのが、決勝でフェデラーと再戦するチャンスがあること。試合を中継したBS朝日で解説を務めた松岡修造氏(47)は「『もう一度フェデラーとやりたい』。そういう心が燃えてきていると思う」と断言した。敗戦から学び快進撃を続けてきたのが今季の錦織。この日の敗戦が与えるマイナスの影響はないはずだ。

 一方で錦織の課題はサーブ。この日は5度もダブルフォールトするなど精度を欠いた。だが日本テニス協会関係者は「前よりサーブがよくなっても(成功)頻度は多くない。しかし、いいところで入る。サービスゲームキープの確率も高くなっている。エースは少ないけど、その後の展開が楽になる」と進化していることを明かした。

 錦織は今季5度目となるラオニッチ戦に向け「リターンがキーになる。しっかり返すのが一番のカギ」と、すでに臨戦態勢。1次リーグ最終戦に勝利し、準決勝の扉をこじ開ける。