錦織の先輩が語る「おにぎり」秘話

2014年09月10日 06時45分

錦織の秘話を明かす不田さん

 テニスの全米オープンで、日本人選手として初めて4大大会のシングルス決勝を戦い、敗れたが世界を沸かせた錦織圭(24=日清食品)。“エアK”の歴史的快挙の原点といえば、13歳から練習拠点としている米フロリダ州にある「IMGニック・ボロテリー・テニスアカデミー」だ。日本人としては最初にIMGアカデミーに入学し、錦織をジュニア時代から知る元プロテニス選手の不田涼子さん(27)が当時の秘話を本紙に明かした。

 2012年に右ヒザの故障のため現役を引退。現在は競技経験をスポーツ振興や社会貢献に役立てるために、同志社大学スポーツ健康科学部で学んでいる不田さんは錦織の快挙に声を弾ませた。

「もうビックリというか、すごすぎて実感が湧かないですね。すべての選手が4大大会を目指して、日々頑張っている。出場することだってすごいことなのに、その頂点を決める試合に圭君が進んだのですから、夢のような話です」

 不田さんが錦織を最初に見たのは12歳以下の選手が出場するジュニア大会。その印象は「まったく違うレベルでした。体の柔らかさ、ボールへのタッチ、打ち方、何もかもすごかったですね。すでに12歳のときにドロップショットを打っていました。こうやって世界のトップレベルになったから“そういえば、あの時もすごかったな”と思うのではなく、あの時に“これは本当にすごい選手”と感じたのを覚えています」というほど鮮烈なものだった。

 ジュニア時代から類いまれなる才能を発揮していた錦織だが、テニス界の世界最高峰・4大大会で勝ち進むのは容易なことではない。不田さんは「才能はもちろん、すごい努力もある。マイケル・チャンをコーチに迎えたことも大きいと思います。こうしたタイミング、努力、才能がすべて揃ったからこそ、決勝まで進むことができたんでしょう」と話す。

 その錦織の少年時代の素顔は「普通の子」(不田さん)だという。不田さんは13歳で“日本人1期生”としてIMGアカデミーに留学。その後、プロで活躍したが、05年に右ヒザを故障。復帰に向けて2度の手術を受け、リハビリをIMGアカデミーで行った。その時に錦織が在学していた。

 その当時を不田さんはこう振り返る。「IMGがある場所はすごく田舎で周囲には何もないんです。規則も厳しく、特に18歳未満の選手はなかなか外出できません。錦織君とはエージェントが同じだったこともあり、私たちがIMGにいる時は、息抜きも兼ねてよくスタッフと一緒に施設の外に食事に行っていました。ほんわか、ゆったりというイメージですね。でも、いい意味で私たちには理解できない“こだわり”を持っていましたね」

 そして、錦織は、不田さんがリハビリを終えて帰国する直前に感謝の“サプライズ”をプレゼントしたという。

「私たちの帰国前日の練習に、錦織君がおにぎりを差し入れてくれたんです。わざわざ炊飯器とお米を買って作ってくれたそうです。彼は『初めておにぎりを作りました。1回目はお水を入れすぎておかゆみたいになったので、もう一度、炊き直しました』と笑っていました」

 コートでは闘志あふれるプレーで世界の強豪に真っ向勝負を挑む錦織だが、コートを離れれば律義で優しい心の持ち主。そうした面を持ち合わせているからこそ、周囲のサポートを得て今回の活躍につながったのだろう。

☆ふだ・りょうこ=1986年10月25日生まれ。神戸市出身。3歳からテニスを始め、小学6年の時に全国大会(12歳以下)優勝。13歳でIMGテニスアカデミーに留学。15歳で全日本ジュニア(18歳以下)で優勝するなど多くのジュニア大会を制覇。世界ジュニアランキング7位となり、17歳でプロ転向。ツアーに参戦して数々の大会で優勝。2012年3月に現役引退を発表。現在は同志社大学在学中。

関連タグ: