【女子テニス】大坂なおみ 二人三脚で戦ってきた最愛の恋人へ贈る〝最高の勝利〟  

2020年08月27日 11時00分

大坂が得意のサーブで逆転勝利(ロイター=USA TODAY Sports)

【ニューヨーク26日(日本時間27日)発】万感の思いが詰まった勝利だった。女子テニスで世界ランキング10位の大坂なおみ(22=日清食品)が「ウエスタン&サザン・オープン」準々決勝で同20位のアネット・コンタベイト(24=エストニア)を4―6、6―2、7―5の逆転で撃破。新型コロナウイルス禍のツアー中断から初の出場大会でベスト4進出を決めた。単なる白星ではない。SNSで誹謗中傷されながら、二人三脚で戦ってきた最愛の恋人へ贈るバースデー勝利でもあった。

 この日は交際中の人気ラッパー、コルダエの23歳の誕生日だった。準々決勝の開始の約4時間前、大坂は自身のインスタグラムに見つめ合う2人の写真をアップし「最高の誕生日になることを願っている。私がそっちにいられないのは残念だけど、その埋め合わせをするわ」と“愛のメッセージ”を送っていた。まるで戦場に向かう前の決意の言葉だった。

 大坂は恋人とつながったスマホを手に持ち、コートに現れると、インスタの幸せそうな表情とは一変し、闘争本能にスイッチが入った。

 第1セットは先にブレークを許して奪われ、第2セットもファーストゲームでブレークされ、第3ゲームでもブレークポイントを与えて大ピンチに立たされた。以前の大坂なら劣勢の中でメンタルを維持できなかった可能性もある。しかし、絶対に負けられない特別な日。“伝家の宝刀”サービスエースでデュースに持ち込んで踏みとどまると、一気に流れを引き寄せる。直後の第4ゲームでは華麗なリターンエースも決まってブレークバックに成功。そこからは強打のストロークで相手のミスを誘い、豪快なウイナー、サービスエースが面白いように決まる。結局、6ゲーム連続奪取で第2セットを取った。

 ファイナルセットは第2ゲームで先にブレークするも第7ゲームでブレークバックを許し、ここから一進一退の展開。それまで冷静にプレーしていたが、ミスショットで大声を張り上げて悔しがるシーンもあった。それでも最後は第12ゲームをデュースの末にブレークし、見事な逆転勝ち。恋人に誓った「埋め合わせ」を通り越し、補って余りあるバースデー勝利をプレゼントした。

 大会前、コロナ禍で未曽有の世の中を経験した大坂は「たぶん私は以前と違う人になったと感じる」とハッキリと口にした。米経済誌「フォーブス」が発表した長者番付では女子アスリート史上最高の約40億円で1位となったが、プレーヤーである前に一人の女性として様々なことに向き合った。その一つが5月に米国で起きた黒人男性暴行死事件だ。SNSを通じて積極的に抗議の意見を発信。「アスリートが政治に口を出すな」と批判されると「(家具製造・販売大手の)IKEAで働く人はソファの話しかしちゃいけないの?」と真っ向から反論した。

 そのさなか、黒人差別抗議デモ活動に参加したコルダエが逮捕された。この時も大坂は堂々と彼を擁護する発言をSNSで繰り広げ、誹謗中傷されても一歩も引くことはなかった。敗色濃厚の場面ではコート上で号泣し、ふがいない試合をした直後の会見拒否した弱い自分と別れを告げ、強いナオミにアップデートしてくれたのが他でもないコルダエだったのだ。

 準決勝の相手は過去1勝1敗の世界22位、エリーズ・メルテンス(24=ベルギー)。あと2つ勝ってVを手に入れれば、さらに強い姿で2018年に初制覇した全米オープンに乗り込めるはずだ。