まさに「一流」の徹底ぶりだ。右ヒジの故障でツアーを欠場している男子テニスの世界ランキング9位・錦織圭(29=日清食品)が14日、東京・有明コロシアムのイベントに登場した。

 当初は4大大会で史上最多の20勝を挙げた同3位ロジャー・フェデラー(38=スイス)とチャリティーマッチを行う予定だったが、負傷中のため回避。この日はボールパーソンや主審を務めるなどゲストとして会場を盛り上げたが、その中に珍しい光景もあった。

 それはキッズクリニックでの一幕。コーチ役の錦織は軟らかいボールを使った「テニピン」を初体験。手にグローブ状のラケットをハメるのだが、利き手ではない左手に装着した。子供らとの打ち合いでは常に左手を使って、飛び入り参加したフェデラーとの対決でも右手は使わなかった。その後、ラケットを使用するミニゲームでもサウスポーに徹したのだ。

 7月の全仏オープンから右ヒジ痛を抱えていた錦織は楽天ジャパン・オープンとマスターズ上海大会を欠場し、21日開幕のエルステバンク・オープン(オーストリア・ウィーン)で復帰予定。子供用ボールで右手に変な感触が残るのを嫌った側面もあるだろうが、たとえ遊びでも右手を使えば右ヒジに不測の事態が起きるかもしれない。過去にファンとハイタッチして右ヒジを痛めた野球選手もいるため、あらゆるリスクを想定し、右手を“封印”した格好だ。

 錦織が出場を目指す11月10日開幕のATPツアー・ファイナルズ(英ロンドン)は世界トップ8しか参加できない今季最終戦。すでに6枠が確定し、残り2枠を錦織を含めた複数選手が争っている。参戦決定まで大会は2つしかなく、日本のエースは万全の状態で臨むため細心の注意を払ったと言えそうだ。