元相棒に何思う…。女子テニスの世界ランキング4位・大坂なおみ(21=日清食品)の元コーチとして知られるサーシャ・バイン氏(34)が17日、本紙の単独インタビューに応じた。現在はクリスティナ・ムラデノビッチ(26=フランス)のコーチを務めており、日本で開催中の国際大会「東レ・パンパシフィック・オープン」(大阪・ITC靱テニスセンター)のために来日。大坂を世界1位に導いた同氏が、テニスコーチの宿命でもある「契約解除」について語った。

 サーシャ氏といえば、大坂のメンタル強化に尽力し、4大大会2連続V、さらに世界ランキング1位に導いたコーチとして有名だ。一方で、2月に大坂が突如として契約解除をSNSで公表し、世間を驚かせた。大坂をランク下位から世界一に上昇させた手腕は高く評価され、独自のメンタル強化理論を記した著書「心を強くする『世界一のメンタル』50のルール」(飛鳥新社)は今、大きな話題を呼んでいる。

 そんなサーシャ氏はこの日、出版イベントに登場した。先週13日に大坂は、サーシャ氏の次にコーチを務めたジャーメーン・ジェンキンス氏(34)とも同じような形で契約解除を発表。時期が重なっただけに何を思うのか?

 イベント後、本紙が直撃すると「ちょうど中国の大会に参加していた時、WTA(女子テニス協会)の公式ツイッターの投稿を読んで知りました。基本的に他の人のことはあまり気に留めていない。特に今のなおみの状況も分からないので、ホントに読んだまま、そうなんだって思っただけです」と淡々と語った。

 サーシャ氏と契約を解除した直後から大坂は優勝から遠ざかり、世界1位から4位に転落した。「コンビ復活」を望む声も出ているが「なおみに限らず、私が仕事をしたどの選手についても『二度とこの選手とは組まない』とは思っていない。ただ、今の私は最大限のエネルギーをムラデノビッチ選手に、と思っています」と吐露。その上で「シーズンが終わったら、改めて考えるかもしれません」と付け加えた。

 サーシャ氏は18日以降に「東レ――」の会場入り。大会中に“元相方”とのニアミスも考えられるが、契約解除後も大坂と会場で顔を合わせれば、普通に「ハイ!」と言ってあいさつを交わすという。

 著書の中では契約解除を告げられたことについて「何か起きる裏には必ず何かがある(中略)いずれ必ず明らかになるだろう」と記されている。この発言について、さらに深く追及すると…。

「なおみの前にコーチをしていたキャロライン・ウォズニアッキ(29=デンマーク)も40位から2、3位に上げたけど、ある日、解消したいと言われた。私は落ち込みましたが、すぐにその後になおみからオファーがあった。なおみと一緒に過ごした1年間は素晴らしい時間でしたが、彼女も解消したいって言ってきた。本当にいいシーズンを過ごしたんです。でも、選手は他のことを求めた。私はそれでいいと思っている。基本的に過去を振り返ってクヨクヨしない。今は理由は分からないけど先に分かるかもしれない」(サーシャ氏)

 さらに本でも触れている契約解除の理由については改めて「100%、お金が理由ではありません」と本紙に断言した。

 コーチした選手の成績向上に大きく貢献しながら、立て続けに契約解除。この現実について「人生ってそんなもの。結局その後にどう生かしていくか。自分次第で人生が良くなるか、悪くなるかが決まる」と達観する。

 報道各社との囲み取材では大坂が先日、売り出し中の米国人ラッパー、YBNコルダエ(21)とのキス写真をインスタグラムに投稿したことについて「私は彼女にテニスしか教えてないですし、コート外のことは彼女の自由。誰かとお付き合いするかどうかは、自分で決められる年齢ですからね」と笑顔で語った。

 大坂に伝授したポジティブな精神論。世界1位に押し上げた“心のコーチ”の神髄はここに隠されている。