【全米OP】大坂なおみ「仮面の笑み」の奥

2019年09月04日 11時00分

試合中、何度も笑みを浮かべた大坂だが…(ロイター=USA TODAY Sports)

【ニューヨーク2日(日本時間3日)発】テニスの全米オープン第8日は同地のビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われ、女子シングルス4回戦で昨年覇者の世界ランキング1位、大坂なおみ(21=日清食品)が今季2戦2敗と苦手にする同12位のベリンダ・ベンチッチ(22=スイス)に5―7、4―6で敗戦。8強進出を逃し連覇の道が途絶え、大会後の世界1位陥落も決まった。試合中は劣勢ムードの中で笑みを浮かべる余裕を見せたが、実は“仮面”の笑み。専門家が指摘するプレー中の隠しきれぬ焦りとは――。

 雨天のため屋根が閉められたセンターコート。伝説の名プレーヤーのロッド・レーバー氏(81)も見守る中、大坂のサーブで試合は始まった。

 第1セット、いきなり第1ゲームをダブルフォールトでブレークされて劣勢に立たされたが、第4ゲームでブレークバック。その後は互いにサービスゲームをキープする展開となったが、第11ゲームでブレークされ、このセットを落とした。

 第2セットは第1ゲームで初めて「カモン!」の叫びが出てキープ。しかし、2―2で迎えた第5ゲームで痛恨のブレークを許し、これが決定打となって終戦。連覇の夢が破れた大坂は「ベンチッチがきっちりプレーして、やりたい戦術を実行した。残念な気持ちだし、全米のタイトルを守りたかった」と肩を落とした。

 大坂のパワーを封じるため、ベンチッチは相手の裏を突く戦術で主導権を握った。サービスエースの数は大坂の9に対し、ベンチッチは0。まさしく「柔よく剛を制す」という試合内容だった。DAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏(47)は「大坂選手は決して悪いテニスをしていなかったけど、ベンチッチがそれを上回った。展開が早く、息つくヒマがない。どんどん気持ちが切羽詰まっていった感じでした」と振り返った。

 この日の大坂は終始、柔和な表情を見せていた。試合前に「勝つためには冷静さを保つことが大事」と自分に言い聞かせたように、イライラしてラケットを投げつけた前回の対戦時とは一変。ミスショットしても笑みを浮かべ、敗色濃厚の場面でも余裕を漂わせた。しかし、これは焦りの裏返し。イラ立ちは第2セット第5ゲームで如実に表れていた。

 ネット際に絶好のチャンスボールが来ると、大坂はスイングボレーでクロスに強打。だが、完全に読まれてリターンされて0―40となると、次のダブルフォールトでブレークされた。佐藤氏は「一般的にストレートよりクロスの方が自然と力が入るし、打ちやすい。だから余裕がある時はクロスと見せかけて、打点をズラしてストレートに打つことができる」と前提を説明した上で、こう分析する。

「大坂選手は決めたい気持ちが先立ち、冷静にストレートに打つ精神状態ではなかった。あの場面で心に余裕があれば逆転もあったと思います」

 嫌なムードになった第5ゲーム終了後、大坂はトレーナーを呼んだ。大会前に痛めた左ヒザの治療はせず、飲み薬だけ受け取って服用したが「試合の流れを変える意図が見え隠れしました」(佐藤氏)。大坂は試合後「左ヒザも少し気になったけど、負けた理由にはしたくない」と話したが、ベンチッチの勢いを止めることはできなかった。

 この敗戦により、大会後に昨年の優勝ポイントが失効する大坂は世界2位のアシュリー・バーティ(23=オーストラリア)に1位の座を奪われることが決定。次戦は14日開幕の東レ・パンパシフィック・オープン(ITC靱テニスセンター)。1位をキープして初の大阪開催の大会に凱旋することはできなくなった。「たこ焼きとかお好み焼きとか、いろいろ食べたいものがある。それは冗談だけど、大阪に戻ることにとても興奮している」とリップサービスを忘れなかったが、無念さばかりが際立つ結果となった。