【ウィンブルドン】錦織 悲願Vへ最大の壁・フェデラー攻略法

2019年07月10日 11時00分

勝った錦織は派手なガッツポーズを見せた(ロイター)

【英ロンドン8日(日本時間9日)発】悲願のVが見えてきた。テニスのウィンブルドン選手権男子シングルス4回戦で、世界ランキング7位の錦織圭(29=日清食品)は同58位のミハイル・ククシュキン(31=カザフスタン)を6―3、3―6、6―3、6―4で撃破。グランドスラム5大会連続の8強進出を果たし、いよいよ準々決勝(10日)で史上最強の“芝王者”ロジャー・フェデラー(37=スイス)に挑戦する。GAORAテニス中継解説者の佐藤武文氏(47)は勝負を分けた“神戦術”と、最大の壁・フェデラー戦の攻略法を指摘した。

 ククシュキンは過去8戦全勝と“カモ”にしている相手だが、この日ばかりは手ごわかった。

 第1セットは難なく奪ったが、第2セットは第8ゲームで先にブレークを許した。「フォアもバックも低い弾道で打ちづらくて」と漏らしたように、ラリーで翻弄されるシーンも目立ち、ストレート勝ちを続けてきた今大会、初めてセットを落とした。それでも第3セットで流れを引き戻して立て直すと、ブレーク合戦となった第4セットは第6ゲームで先にキープしてペースをつかみ、2時間43分の激戦を制した。

 試合後、錦織は「今日はやりにくかった」としながらも、勝因については「しっかり我慢ができた」。佐藤氏は、勝敗を分けたポイントとして、第3セット、4―3で迎えた第8ゲームを挙げた。

「ブレークが欲しい場面でしたが、錦織選手は強打をせず、逆にスライスを打って相手のミスを誘う作戦に出たんです。卓球で言えばカットマンのような戦法。ここでそれをやるか?って驚きました。錦織選手にはこういう度胸があるんです」

 相手に低い打点で打たせると、当然、ミスの確率は上がる。絶対に落とせない場面で錦織はあえて相手の嫌がるところを狙い続け、ジッとミスを待った。錦織がいう「我慢」は奏功し、難敵は自滅していったわけだ。

 もう一つ、この試合で「運」も錦織に味方した。そのシーンも第3セットの最中だった。前のセットを落とし、嫌な雰囲気が漂う中、第5ゲームの15―15で錦織の第1サーブはフォールトとなった。ここで大きく流れを変える出来事が起きた。観客の一人が体調を崩し、スタンドの外に運ばれる事態となり、ゲームが中断。これにより“特例”で第1サーブが打ち直しとなり、このサーブを決めてポイントをゲット。リズムに乗った錦織は第8ゲームをブレークし、このセットを奪ったのだった。

 緻密な「戦術」と、勝敗を分ける「時の運」によって4回戦を突破。今年は全豪、全仏と序盤の長時間試合がたたり、体力を消耗して迎えたベスト8で涙をのんでいるが、今大会は4回戦まで1セットしか取られない“省エネ”で体力にはまだまだ余裕がある。この状態で満を持して臨むフェデラー戦。最大の「壁」を打ち破るとすれば、どんな展開なのか。

 佐藤氏は「フェデラーのネットプレーをいかに封じるか。相手が前に出てきた時、ローボレーとハーフボレーの中間あたりを狙い、迷わせてミスを誘う」と対策を挙げる。また、過去にフェデラーを撃破しているときは「フォアに回り込ませず、バックを打たせ続けてミスを誘っている」と指摘。勝つ確率は決して高くはないが、丁寧にやれば可能性は十分あるという。

 次戦は悲願の4大大会Vに向けた最大の難所。だが、ここまでの戦いぶりを見る限り、過去最高の追い風が錦織に吹いているようだ。